こんにちは友幸(@humberttomoyuki)です。
IT業界にいると一度は耳にする言葉が「SES」だ。
「SESって聞いたことがあるけど今いちピンとこない」という人や「なんとなくわかるけど、SESと派遣って何が違うの?」と思っている人も多いだろう。
わたしも最初は全然ピンとこなかったが、客先で働いているエンジニアの人はSESについて知っておいたほうがいい。
今回はSESの特徴や、派遣や請負との違いについて詳しく解説、SESの評判が悪い理由も説明するよ。
SESとは?
SESは「システム・エンジニアリング・サービス(System Engineering Service)」の略だ。
ITエンジニアの「労働力」をクライアントに提供して対価を得るサービスのことを指す。
SESはエンジニアであれば、開発エンジニアやインフラエンジニアなど、職種や業務内容に関係なく全て対象となる。
IT業界は、自社製品や自社システムを持っている会社であれば、自分の会社で働くことになるが、多くの会社は自社開発をするような力は持っていない。
そのため多くの企業では、自社のエンジニアを客先に派遣して、エンジニアの労働の対価として収入を得るビジネスモデルとなっている。
同じように客先に常駐して働く契約には、SES契約の他に「派遣契約」や「請負契約」がある。
SESと派遣と請負の違い
IT業界には、SES契約の他に「派遣契約」や「請負契約」という契約方法がある。
似ているので違いがわかりにくいが、3つの契約の違いを簡単にまとめると以下のようになる。
指揮命令権 | 提供するもの | |
---|---|---|
SES | 自社 | 労働力 |
派遣 | クライアント | 労働力 |
請負 | 自社 | 成果物 |
SESと派遣の違い
SESと派遣、どちらもクライアントにIT技術者の「労働力」を提供する契約だ。
両者の違いは「指揮命令権の違い」になる。
簡単にいうと「誰の指示で働くか」という違いだね。
- SES:自社の指示に従う
- 派遣:クライアントの指示に従う
派遣の場合は、派遣先の社員の指示に従って仕事をすることになるが、SESはクライアントのもとに派遣されて働いても、指示系統は自社(派遣元)にある。
もしSES契約なのにクライアントの指示に従って働いている場合は、契約違反となる。
そのためSESは、クライアントのもとに1人だけ常駐するということができない。
1人しかいないと指揮命令がクライアントになってしまうので、契約違反になるからだ。
派遣の場合は指示系統がクライアントにあるので、1人だけ派遣されても問題ない。
またSESは指示命令権が自社にあるので出勤や退勤時間、残業などの労務管理も自社が行い、クライアントが口を出すことはできない。
会社の違いもあり、派遣の場合は、派遣会社が厚生労働省から派遣事業の認可を得る必要があるが、SESの場合はそれが必要ない。
SESと請負の違い
次にSESと請負契約の違いだ。
2つはどちらも指揮命令系統は自社になるが、それぞれ提供するものが違う。
- SES:「労働力」を提供する
- 請負:「成果物」を提供する
SESは決められた契約期間にエンジニアが働く「労働力」を提供するが、請負の場合は決められた期間に「成果物」を提供することが求められる。
請負契約は、成果物を提供する契約なので、成果物を提供できない場合は報酬を得ることができなくなる。
SESは「頑張ってみたけどダメでした」という場合でも、エンジニアの労働力を提供しているので報酬が発生するが、請負の場合はそれでは報酬が発生しない。
SES契約は特定派遣を行っていた会社に多い
SESはもともと特定派遣を行っていた会社に多い。
特定派遣は派遣会社の正社員として雇われて、客先常駐して働く派遣のことだ。
2018年9月に完全廃止された。
「一般派遣」は資産など一定の条件を満たして厚生労働省の認可を得る必要があるが、「特定派遣」は、認可は必要なく届出制となっていて、誰でも簡単に事業を始めることができた。
そのため一般派遣の要件を満たすことができない多くの中小企業は、条件のゆるい特定派遣の届出を出して活動をしていた。
しかし特定派遣の会社は派遣先のない社員をすぐに解雇するといったブラック企業が多く、色々と問題があった。
そのため届出制の特定派遣は廃止し、派遣は全て認可制となることになった。
特定派遣が廃止されることで、一般派遣の要件を満たせない中小ベンダは他の会社と統合されるといわれていたが実際はそうはならなかった。
なぜなら特定派遣を行っている会社の多くはSES契約をメインで行っているからだ。
SES契約によって利益を得ることができるので、特定派遣が廃止されたあとも影響はほぼなかった。
特定派遣が廃止されたため、その後、一般派遣の認可を得ていない特定派遣の会社は、現在は全てSES契約になっていると考えていい。
SESの評判が悪い理由
SESは評判が悪いことが多い。
どうして評判が悪いのかというと以下のような理由があるからだ。
- クライアントの指示に従っていることも多い
- 派遣のように許可が必要ない
- 多重請負や二重派遣が容易にできる
詳しく解説するよ。
現場でクライアントの指示に従っていることも多い
SESは契約上は指示系統は自社(派遣元)になっているが、実際はクライアントの指示に従って働いていることも多い。
「SES契約」と「派遣契約」の区別がつきにくいのはこのせいだ。
クライアントの指示で動くのは派遣契約でしか認められていないので、本来であればこのケースは契約違反だ。
しかし実際に客先常駐している時に、クライアント側に「これをやってほしい」といわれたら、クライアントに労働力を提供している以上「いいえ、やりません」とはならないだろう。
派遣とSESには「指揮命令権」がどちらにあるかという違いがあるが、何を持って「指揮命令」したのかが曖昧だ。
「クライアントの意見を聞いてSES側が指示を出した」のか「クライアントが指示を出した」のかを区別するのは難しい。
SESと派遣は、一見両者の区別がつきにくいため、クライアントもSESと派遣の違いを理解できていないことも多い。
そのため実際やっていることは「派遣契約」と変わらないことも多い。
派遣と違い派遣業の許可などがなくても利用できる
SESは派遣契約ではないので、派遣事業のように厚生労働省の認可などは必要なく、契約を結ぶことができる。
しかし前述したとおり、SES契約でも現場のエンジニアはクライアントの指示に従うことも多くあり、実質は派遣と働き方に違いはないことも多い。
しかし、そうなるとSES契約をすれば、派遣事業の認可を得ていない会社が、派遣業と同じことができてしまうということになり、おかしなことになる。
多重請負や二重派遣が容易にできる
派遣の場合、派遣契約を結んだ派遣会社とは別の会社の人間をクライアントに派遣することは「二重派遣」となり派遣法で禁止されている。
しかしSES契約の場合は、クライアントに送るのが必ずしも「自社の人間」である必要はない。
- 派遣会社AがクライアントBに別の会社Cの人材を送るのは「二重派遣」となりNG
- SES会社AがクライアントBに別の会社Cの人材を送ってもOK
SESの場合、自社の社員を送る必要がないので、「A社がB社に依頼、B社がC社に依頼、C社がD社に依頼」といったようにどんどん多重請負の状態になる可能性がある。
そして前述したとおり、SESと派遣は区別されないことが多く、クライアントが指示を出すことも多い。
つまり本来違法である二重派遣と同じ状態がSES契約では起こりやすくなる。
当然下請けになればなるほど、受け取る報酬が少なくなるので、実際に働くエンジニアの収入も少なくなるので労働条件も悪くなる。
エンジニアで働いていて「収入が少ない」と感じたら
エンジニアで働いていて収入が少ないと感じた人は、SESで働いているせいかもしれない。
SESで多重請負になっていると、仕事が大変な割に実際に働いているエンジニアの収入が少なくなるからだ。
「エンジニアで客先常駐しているけど、サービス残業ばかりで手取り20万くらいしかなくて辛い」という人は、スキルがあっても会社の構造や仕組みのせいで、収入が少ないのかもしれない。
環境が悪い場合、スキルレベルが変わらなくても職場や環境を変わるだけで、収入が一気に増える可能性が高い。
一度エージェントの無料相談を利用してみることをおすすめするよ。
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SESのまとめ
- SESは客先常駐する働き方
- 派遣との違いは「指揮命令権」
- 請負との違いは「成果物の有無」
- 現場では契約が曖昧になることも
- 給料が安いことが多い
SESは客先に常駐して働く働き方だ。
派遣とは違い、指揮命令権がクライアントではなく自社にあるが、現場では曖昧で実際は派遣と区別がつかない働き方をしている場合もある。
「SES=悪」という人もいるが、SESは客先常駐なので「いろいろな現場で経験を積める」「未経験でも働きやすい」というメリットも有る。
現場で働くエンジニアからすれば、SESの一番の問題は「給料が安い」ことだろう。
働いている身からすれば、給料が高ければ書面の契約内容が「SES契約」だろうがなんだろうがあまり関係ないんだよね。
やることは一緒なんだし。
だからSESだったとしても収入に満足しているなら続ければいいだろう。
ただ、もしエンジニアで働いてて、収入に少しでも不満があるなら、別の環境でどれくらいの収入になるのか自分のために一度確認しておいたほうがいい。
転職をする方針が決まっていない状態でも、エージェントに無料相談することで自分のキャリアの方向性や選択肢やみえてくる。
エンジニアは売り手市場なので、良い条件の仕事も見つけやすい。
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