こんにちは友幸(@humberttomoyuki)です。
わたしは年間200冊くらい本を読んでいる本好きだ。
今回は、今まで読んできた小説の中から、ジャンルを問わず面白かったおすすめの本を100冊まとめて紹介するよ!
面白い小説を探している人はぜひ参考にしてね。
- 小説おすすめランキング91~100位
- 小説おすすめランキング81~90位
- 小説おすすめランキング71~80位
- 小説おすすめランキング61~70位
- 小説おすすめランキング51~60位
- 小説おすすめランキング41~50位
- 小説おすすめランキング31~40位
- 小説おすすめランキング21~30位
- 小説おすすめランキング11~20位
- 小説おすすめランキング1~10位
- 小説おすすめランキングまとめ
小説おすすめランキング91~100位
小説を選んだ時の簡単な基準は以下の通りだ。
- 国内、海外は問わない
- 同じ作家の本は1冊だけ
簡単なジャンルも記載しているので参考にしてね。
100位『abさんご 黒田 夏子』-純文学-
ぼんやりとした記憶と共にある小さい少女の頃の記憶を固有名詞を排した文章でつづる。
装丁のぼやっとしたイメージとぴったりの作品。
両親の性別さえ曖昧なぼんやり感は文学ならでは。
小説は例えば、「楽しい」と思った時に、ただ「楽しい」と言ってしまうのではなく、「楽しい」と思った状況や行動を作り上げることで、「楽しい」という雑な言葉ではなく、本当に言いたい個別具体的な感情や気持ちをすくい取っていく作業のようなものだと思う。
「abさんご」はそういう要約できない気持ちの集積のような作品。
99位『美しい星 三島 由紀夫』-純文学-
三島由紀夫としては異色のUFOや宇宙人の話がでてくるSF小説の皮を被った純文学。
自分たちは宇宙人だと信じている家族が主要な登場人物。
宇宙人だと妄信している痛い電波家族が、UFOと交信するために山に登ったり、核兵器の恐怖から、人類を救うために手紙を書いたりする。
自分は金星人だと信じている娘、暁子の冷たいキャラが好みで印象に残っている。
三島由紀夫の文章でしか味わえない、装飾的な文語調の日本語が魅力。
三島由紀夫は「金閣寺」が有名だけど、この小説もオススメだ。
98位『赤朽葉家の伝説 桜庭一樹』-エンターテイメント-
山陰地方の紅緑村に代々続く名家、赤朽葉家。 未来を観ることのできる祖母、千里眼の万葉(まんよう)、死者に絡め取られた人生を過ごす母毛鞠(けまり)、そして現代を生きる語り手の瞳子(とうこ)。 戦後に赤朽葉家の女として生まれた親子三代の物語。
日本の経済成長により徐々に生活を変えていく紅緑村を舞台にして、不思議な出来事が起こる神話的小説。
テンポよく話が進み、最後はミステリ調になる。 それぞれの世代で考え方が異なるが、個人的に現代を生きる瞳子の「何となく生きているがそれではいけないような気がする、だけど何をすればいいのかわからない」という感情に共感する。
著者の桜庭一樹は鳥取出身のため、山陰地方が舞台になることが多い(「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」など)
田舎の閉塞感とそこに住む人々を描くのがうまい小説家。
彼女の作品はなんとなくジメッとした感じがあるが、少女漫画のような雰囲気もあるので、案外読みやすい。
女性にしか書けないだろうなと思う小説。
97位『槿 古井由吉』-純文学-
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内向の世代を代表する作家。
古井由吉の長編小説。
御年77歳の大御所作家である。 主人公の杉尾と2人の女性の関係を描いた作品。
人間の狂気といのだろうか、現実の輪郭の曖昧さのようなものを考えさせる。
古井由吉独特の文体で、文章の力と言うものを味わえるこれぞ純文学といった作品。
村上春樹の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」と話のすじが似ていると思ったのはわたしだけなのだろうか。
96位『話の終わり リディア・デイヴィス』-海外文学-
リヴィア・ディヴィスはインタビューで「物語の出来事自体に興味はなく、そこで人間がどう考えるのか、意識のプロセスに興味がある」と語っている。
この作品もただの恋愛小説ではなく、主人公の女性が過去に年下の男と付き合っていたことを小説にしようと思い振り返るという二重構造になっている小説。
過去を振り返りながら、自身の記憶は本当に正しいのかと思い直し、書き直す。
そのプロセスも含めて、過去の恋愛が描かれる。
小説家が小説を書く過程を含めて描いたエッセイ風恋愛小説。
年下の男はポールオースターではないかという話もあるらしいよ。
95位『俺俺 星野 智幸』-純文学-
俺俺詐欺を働いた主人公永野均が、実家に帰るともう一人の俺がいて次々に俺が増殖していく。
次第に俺と俺同士が殺し合う展開になる。
わたしが使う一人称の「俺」と他人が使う「俺」は同じではない。
わたしはわたしで他人は他人だからだ。
しかし文章の上では同じ「俺」である。
そんな文章上の同一を小説世界で再現した小説。
映画化もされている。
見てないけど。
94位『もしもし ニコルソン・ベイカー』-海外文学-
テレホンセックスを男女が行う様子をひたすら描写した小説。
色々な比喩を交えて、お互い楽しもうとする。
比喩がいちいちインテリくさい。
エスカレーターを登る会社員の考えごとをひたすら描写した中二階に続いて、ニコルソン・ベイカーのミクロコスモスの世界が味わえる。
どんなものでも小説になるということを教えてくれる小説。
93位『緑のさる 山下澄人』-純文学-
読んだ時にカフカっぽいなと思った小説。
平易な文章で日常を描くんだけど、独特の浮遊感がある。
突然、カニの視点になったり、トラと戦ったりと日常がファンタジーな小説。
作者が劇団の人なのでそのへんが自由にできるのかも。
自由奔放な純文学小説。
92位『わたしの物語 セサル・アイラ』-海外文学-
わたしがどのように修道女になったかを語りだしたかと思えば、話はどんどんと読者が思っていた方向とは別の方向へ向かっていく。
話がそれていくわたしの物語はどこに行き着くのか。
明後日の方向に話がそれていく様は、小説の面白さは本道ではなく、脇道にあるんだといわんばかり。
このふてぶてしさを体験したい方はぜひ本書を読んでほしい。
修道女と関係のないインパクトのあるピンクの表紙絵の意味は読んでいればわかるよ。
91位『不安の書 フェルナンド ペソア』-海外文学-
ほぼ無名のまま死んだフェルナンドペソアの遺稿を編集、出版したもの。
掃除婦のまま生涯を終えたヘンリー・ダーガーがのちにアウトサイダーアートの代表
と言われたように、死後に名高い評価を経た作品。
短い断片の連続からなっており、生きることの不可解さ、不条理、諦念などがペシミスティックな文章で綴られる。
共感できる部分が多く「そう、そうだよ」と思ってしまう作品。
中二病っぽい感じがたまらない。
社会性なんてなんのその。
中二病最高!
小説おすすめランキング81~90位
90位『毛深い闇 園子温』-エンターテイメント-
映画監督の園子温が書いた小説。
映画監督だけあり、要点を抑えた疾走感のある展開で楽しめる。
後半の切子が走るシーンは特におすすめ。
89位『殺人出産 村田 沙耶香』-純文学-
10人子供を産んだら1人殺してもいい殺人出産制度ができた世界の話。
男性でも人口子宮を取り付けることで、子供が産めるようになっている。
子供を産む人は「産み人」として崇められる。
同収録のトリプルは、3人でカップルになるのが若い子の間で流行る話。
作者は「クレイジー沙耶香」の異名を持ち、コンビニで働きながら小説を書く変わった小説家。
もしもの世界を設定して、今の世の中の当たり前とは何かを問いかける小説が多い。
2016年「コンビニ人間」で芥川賞を受賞したよ。
88位『うつつ・うつら 赤染 晶子』-純文学-
「初子さん」と「うつつ・うつら」の2編を収録した小説。
「初子さん」はパン屋の2階に住みながら洋裁の仕事をしている女性の話。
仕事を頑張ってもお金が入らないいわゆるワーキングプアの状態にある。
「うつつ・うつら」は場末の劇場で漫談をするマドモアゼル鶴子という女性の話。
彼女はいつの日か映画女優にスカウトされる日を待って何十年も舞台に上がっている。
両作品とも、ただ普通に生活しているだけなのに、どうしてこんなにも生きるのは辛いのかという、日常の悲しさを感じさせる作品。
87位『論理と感性は相反しない 山崎ナオコーラ』-純文学-
表題の作品は神田川歩美と真野秀雄のカップルが一緒に住んで暮らすところから始まる。
特にこれといった出来事は起きないが、カップルの日常と心の動きを上手に描いている。
神田歩美の友人である矢野真由美は、山崎ナオコーラの分身ともいえる存在。
彼女は小説家「矢野アユミズ」としての自分と、個人「矢野真由美」としての自分のギャップや周りの反応に違和感を抱いている。
恋愛をしようとしても、異性に個人の自分としてではなく作家「矢野アユミズ」としか見てもらえない。
なんとかしたいが、自分の力ではどうしようもない。
そんな私小説っぽい部分もでてくる。
絲山秋子がエッセイで、自分の小説を読んでいる人とは絶対に付き合わないといって
いたが、小説家という特殊な職業の人間が抱える問題なのだろう。
ポップでユーモアと悲しさのある短篇集。
86位『詩羽のいる街 山本 弘』-エンターテイメント-
それぞれに問題を抱えている人たちが「詩羽」という女性に出会うことで、自身の問題を解決して行く物語。
4つの章からなりそれぞれの登場人物から視点から詩羽の存在が語られる。
お金も家もないが、ソーシャル・キャピタルがやたら高い詩羽が、人々をつなげることによって問題を解決するというのが今っぽい。
経済やお金とは別の人的資本の価値を提案する岡田斗司夫の「評価経済」や坂口恭平の「態度経済」を体現したような存在。
一気に読める地域コミュニティ小説。
85位『金を払うから素手で殴らせてくれないか? 木下 古栗』-純文学-
小説の自由さを知りたければ、古栗の小説を読めばいい。
表題作は米原が会社にいなくなったので、米原が米原を探しに行くという話。
米原がいないかと、米原の家にいったり、銭湯や行って風呂を浴びたり、ショッピングモールをまわったり、フランス料理を食べたりする。
ナンセンス、不条理、下ネタ、何でもござれの小説集。
84位『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 入間 人間』-ライトノベル-
嘘しか吐かない主人公みーくんと、みーくんにしか心を開かないまーちゃん。
ラブラブな2人が様々な事件に巻き込まれていく(巻き込んでいく?)ライトノベル。
ヤンデレ好きにはたまらないのではないだろうか。
実写化もされた小説。
2017年には、デビュー10周年を記念して新刊が発売されたよ。
あまりライトノベルを読まないのだが、一冊あげてみた。
明らかに西尾維新の「戯言シリーズ」の影響を受けてるよね、これ。
嘘だけど。
83位『ヴァリス フィリップ・K・ディック』-SF-
主人公ファットはある日ピンクの光線を浴びて重要な秘密を知るようになる。
神の啓示だと考えたファットは、ノートに書き留め、教義としてまとめていく。
はたから見たら狂っているとしか言えないファットの神学談義がひたすら続く本。
作者ディック本人の考えが反映されているといわれている。
ディックは世俗的なものと高尚なものが入り混じったかと思うと、それらの関係性をひっくり返す作品が多い。
本作も、ファットが狂人になっただけだと考えていたら、ファットの妄想と一致した映画「ヴァリス」が公開されて、ファットの妄想は正しかったのか! って展開になる。
ヴァリスを読むと、阿部和重の「アメリカの夜」はこの本の影響を受けていることがよくわかる。
メタフィクション好きは是非。
82位『わたしがいなかった街で 柴崎 友香』-純文学-
離婚して契約社員として働く女性が主人公。
彼女は家に帰ると紛争や戦争のドキュメンタリー番組ばかりみてしまう少し暗い性格。
同じ時間に違う場所で起きている戦争と、同じ場所で起きた過去の戦争を重ね合わせながら日常を描いた物語。
時間と場所、2つのべクトㇽにこだわる作者の描く純文学小説。
81位『プレーンソング 保坂和志』-純文学-
保坂和志のデビュー作。
サラリーマンの主人公の家に集まる友人や、猫との交流を描いた作品。
特にこれといった特別なことは起きない、日常を描いた作品。
保坂和志は「ストーリーというものは、読者を作品に引き止めるための要素の一つであって絶対に必要なものではない」と考えていて、どこで終わってもいい小説として書かれている。
どこが面白いとは言えないが、確かに面白い小説。
小説おすすめランキング71~80位
80位『夏の闇 開高 健』-純文学-
パリに滞在した小説家のわたしが、大学の研究者になった昔の恋人と一夏を過ごす話。
主人公はジャーナリストとして、ベトナム戦争を見ていて、戦争の悲惨さに絶望を感じて退廃的な気分に浸っている。
やることといったら、睡眠と食事と昔の恋人との情事くらい。
そんなわたしの心の変化を細かく描写している。
女が主人公のことを「うんこちゃん」と呼ぶのには笑えた。
ドロドロした雰囲気があるので、安部公房や大江健三郎が好きな人におすすめしたい。
79位『蠅の王 ウィリアム・ゴールディング』-海外文学-
飛行機が不時着して無人島に取り残された少年達の物語。
ジェーヌ・ヴェルヌの「十五少年漂流記」のオマージュ作品。
無人島の中でサバイバルするために仲間を集めて、秩序だったグループを作ろうとするが、次第に仲間同士が分裂し対立していく。
サバイバルもの。
この後の展開はどうなるのだろうというドキドキ感は素敵。
蝿の王との対話は圧巻。
78位『ヨハネスブルグの天使たち 宮内 悠介』-SF-
日本製のホビーロボットDX9を中心に展開する短編小説5編。
ドロ沼の内戦の中で生き延びようとする少年と少女。
彼らは耐久試験の為に落下し続けるDX9を助けようとする、というのが表題作の話。
DX9は歌う能力があるロボット版ボーカロイドみたいなもの。
戦闘用に改造されて内紛地域に投入されるなど異なる国のそれぞれの短編で登場する。
伊藤計劃の虐殺器官、ハーモニーが好きな人におすすめ。
77位『象られた力 飛 浩隆』-SF-
表題作を含めた4編の短編小説。
「象られた力」は文字や記号などの図形言語がもたらす力をテーマにした作品。
SFだが幻想的な雰囲気で、表現豊かな文章でイメージしやすく小説の景色が浮かんでくる。
重みのある短編群。
長編小説の「グラン・ヴァカンス」も面白いのでおすすめだ。
76位『時計じかけのオレンジ アントニイ・バージェス』-海外文学-
キューブリックの映画が有名な小説。
不良グループのリーダー、アレックスが主人公。
こいつが本当にひどいやつで、棍棒でホームレスを殴ったり、強姦をしたりと好き放題する話。
まあ、後でしっぺ返しをくらうんだけど。
未来感を出すために登場人物がロシア語と英語を混ぜたスラングを使う。
日本語訳ではよくわからないけどね。
おかしな言葉を使っているのはわかるけど。
最終章が削除された小説と完全版があり、最終章が削除された小説が映画になったため著者は不満だったという話は有名。
ドラマにもなった小説「ビブリア古書堂の事件手帖」でも言及されている。
映画版と小説版で比べてみるのも面白いかも。
75位『人間以上 シオドア・スタージョン』-SF-
超能力を持つ5人の子どもたちが集まって、人間を超えた存在であるホモゲシュタルト(集団が集まって一つの人間を形成する集団人)となる物語。
コンピュータを並列につないで、仮想的に一つの大きなコンピュータとして扱うように、複数の人間をまとめて一つの新人類にするというポストヒューマン小説。
孤独な少年、少女たちが仲間を求め、出会い、成長していく青春小説とも言えるスタージョンの傑作。
74位『ここは退屈迎えに来て 山内 マリコ』-エンターテイメント-
R-18文学賞を受賞した「十六歳はセックスの齢」を含んだ連作短編集。
それぞれの短編をつなぐように、椎名という人物が登場する。
郊外にショッピングモールがあるどこにでもあるような街、そこで感じる閉塞感を描いている。
でもその閉塞感は自分で抜け出すほど絶望的でもない。
タイトルにもそれが現れている。
サブカルかぶれが都会から田舎に帰って、田舎の不満を語るのは確かにあるよなぁと自戒の念をこめて読める小説。
73位『工場 小山田 浩子』-純文学-
工場にパートとして働くことになった牛山桂子、仕事をクビになり派遣として日々文章を校正する牛山桂子の兄、工場の緑化計画のために、高級で雇われたが何をすればいいのかわからない古笛。
登場人物は工場の仕事に疑問を抱きながら、自身を納得させ仕事をこなす。
登場人物の疑問を嘲笑うように、不気味にそびえ立つ工場。
カフカの「城」のように、登場人物は工場の周辺をグルグルとまわるだけで核心にはたどり着かない。
仕事の不条理さを描いたプロレタリア小説。
72位『皆勤の徒 酉島 伝法』-SF-
べっとりした独特の世界観が展開される超絶SF。
表題を含む4つの短編集。
表紙の絵も著者が書いている。
装丁のとおりの世界観。
表題作は、なんだか気持ち悪い生物がブラック企業で働かされている話だ。
短編を読んでいくうちに全ての話が繋がっていき、話の筋がみえてくる。
オンリーワンの異質な世界観をぜひ一度体験してほしい小説。
71位『猫を抱いて象と泳ぐ 小川 洋子』-純文学-
子供の体のままで成長が止まった、天才チェスプレイヤーがカラクリ人形の下に隠れてチェスをうつ話。
主人公リトルアリョーヒンの純粋さが素敵。
最初はタイトルの意味が全然わからないが、読んでみると納得。
静かな詩的世界観で展開する小川洋子の世界を堪能してほしい。
小説おすすめランキング61~70位
70位『わたしを離さないで カズオ・イシグロ』-海外文学-
介護の仕事をしている主人公キャシーは「提供者」と言われる人たちの世話をしている。
物語はキャシーの子供の頃の回想にさかのぼり、次第に彼女がどういう立場の人間なのか明らかになっていく。
意識的に抑えられた文体が淡々と物語を紡いでいく静かな雰囲気をたたえた小説。
物語が進むにつれて、介護の仕事のグロテスクさと世界の不条理が明らかになる。
柴田友幸にカズオ・イシグロの最高傑作と言わしめた小説。
69位『ポーの話 いしいしんじ』-純文学-
学生の頃に友達に借りて読んだ本。
うなぎ女の子どもとして生まれたポーが、泥の川をくだり、様々な冒険をする話。
エロチックな場面や盗みを覚えるところなど、純粋無垢な存在としてのポーが知識を得て成長していくのが楽しい。
いしいしんじの童話のような世界観と相まって、まったりとした気分にひたれる小説。
68位『リリイ・シュシュのすべて 岩井 俊二』-エンターテイメント-
岩井俊二監督が映画化した作品の小説版。
元々、インターネットの掲示板に書かれて物語が進んでいった小説で、本書も全てネットの掲示板に書かれているような形式で物語が進む。
文体が口語体なので読みやすく、ライトノベルっぽいかも。
小説と映画で話の筋が違うので映画を観た人も違いを比べると面白いよ。
67位『鳥類学者のファンタジア 奥泉 光』-純文学-
奥泉光は夏目漱石のパロディを描いているだけあって、ユーモアのある文体が得意。
ジャズ好きなので、色々なキャラクターからジャズ話が語られる。
わたしはジャズに詳しくないが読んでいて特に問題はない。
ジャズ好きにはタイトルを見ただけでニヤッとするかもしれない時代を超えたファンタジー小説。
66位『キャプテンサンダーボルト 阿部 和重 伊坂 幸太郎』-エンターテイメント-
ターミネーターのようなスマホを操る怪人に追われながら、少年時代に友人同士だった2人が、中止の謎を解明していくミステリ要素ありのエンタメ小説。
純文学とエンタメのトップを走る、阿部和重と伊坂幸太郎の共著。
展開の早い小説で500ページほどあるがすぐに読める。
あと、今回のランキングは共著は、単著と別物として扱うことにするよ。
65位『ジーザス・サン デニス ジョンソン』-海外文学-
銃、ドラッグ、盗み、暴力。
アメリカの底辺にいるどうしようもない人々が描かれた11の短編集。
乾いた文体で悲惨な状況が語られるが、どこかユーモラスに感じてしまう。
こんなくそみたいな世界だけどしょうがないよね、といって諦念がみえる。
トムジョーンスやブコウスキー好きにはおすすめ。
64位『恋愛中毒 山本文緒』-エンターテイメント-
恋愛に没頭するあまりに、過剰な行動に出てしまう女性を描いた小説。
真面目な女の人ほど、一度行動に出ると激しい行動をとってしまうのかもしれない。
恋愛小説であり、ホラー小説でもある。
女性に是非読んで欲しい本。
吉川英治文学新人賞受賞作。
63位『幽霊たち ポール・オースター』-海外文学-
ポールオースターの初期作品、ニューヨーク三部作の二作目。
三部作といってもそれぞれの小説に繋がりはないのでどれから読んでも問題ない。
私立探偵ブルーはホワイトからブラックを見張るように依頼されるのだが、ブラックは何も不審な行動をおこさない。
なぜブラックを見張るのか? ホワイトはなにも教えてくれない。
何もしないブラックを見張ることに次第に不安になっていくブルー。
探偵小説の皮を被ったポストモダン小説。
見られることによってしか他人は存在しないのか? とか色々考えさせられる作品。
話がそれるが佐藤友哉の「クリスマステロル」はポール・オースターの「幽霊たち」と「鍵のかかった部屋」のパロディになっている。
これを読んでからテロルを読むと一層楽しめるよ。
62位『すべてがFになる 森 博嗣』-ミステリー-
わたしがミステリー小説を読むようになったきっかけの本。
理系ミステリーの走りになるのではないだろうか。
今作品が森博嗣のデビュー作だが、本当は犀川創平と西之園萌絵が活躍するS&Mシリーズの4作目に書かれた作品。
一番インパクトの強い作品を持ってきてデビュー作としたようだ。
S&Mシリーズは助教授の犀川と、犀川の研究室の学生、西之園が事件にあって解決していくミステリ小説。
ミステリとしても楽しめるが、キャラクター同士の会話のやりとりや、鈍い犀川に好意を抱いている西之園の恋の行方がどうなるのかといったところも楽しい小説。
後にアニメ化もされたよ。
61位『神は死んだ ロン カリー ジュニア』-海外文学-
ニーチェの有名な言葉がタイトルの本書だが、内戦地域にあらわれた神が比喩ではなく本当に死んでしまう。
神が死んだ世界で巻き起こる、集団自殺、新しい信仰の勃興、思想の対立が描かれる。
犬が神の肉を食べて人間の言葉をしゃべる話はブッツァーティの「神を見た犬」の反転させたパロディなのか? と思ってしまった。
アメリカの注目の若手作家の処女小説。
小説おすすめランキング51~60位
60位『ボラード病 吉村 萬壱』-純文学-
主人公恭子は母親と二人で海塚という町に住んでいる。
海塚は以前災厄にあったため、住民は避難生活を送っていたが、ようやく町に戻れるようになった。
読んでいくと少しづつ町がおかしな事になっていることに気がつく。
母親は他人の目を極端に気にしている。
同級生が突然死ぬ。
しかし、同級生が死んでも、みんな驚かない。
なんで?
震災文学の傑作といえる、現代のディストピア小説。
59位『モレルの発明 アドルフォ ビオイ・カサーレス』-海外文学-
絶海の孤島にたどり着いた主人公はそこで暮らしている人々に出会う。
しかし彼らは自分のことを無視し、いないかのように振る舞う。
盟友ホルヘ・ルイス・ボルヘスが「完璧な小説」と絶賛した本。
ビオイ=カサーレスとボルヘスは共著も出している仲良しさんなので多少誇張はあるかもしれないが、面白いのは間違いない。
他者性とはなにかをあぶり出す作品。
58位『ペドロ・パラモ フアン・ルルフォ』-海外文学-
父親を探してたどり着いた町コモラは死者たちの町だった。
死者が生者に話しかけ、お互いの境界が曖昧になっていくラテンアメリカの先駆け的な作品。
メキシコは死者の日に祭りをひらいて、骸骨を飾るなど、日本よりも直接的に死と生が生活に根付いている。
死者が生者に話しかけるのは当たり前のことなのかもしれない。
ラテンアメリカ文学の巨匠ガルシア・G・マルケスに人生が変わったと言わせた本。
ぜひ読むべき。
57位『箱男 安部 公房』-純文学-
わたしが小説をきちんと読むきっかけになった本。
学生の頃に、友人に借りて読んだ。
中年のおっさんが、ダンボール箱をかぶって生活する話。
テレビ番組「電場少年」で箱に入って生活して、人に箱を押してもらう企画があったがそれの元ネタ。
ダンボールの中で生活することは社会的弱者であると同時に、他人に姿を見られない
状態で一方的にこちらから他人を覗き込むことができるという意味で強者でもある。
なんかネット民みたいだね。
安部公房のドロドロした世界観がたまらない作品。
56位『氷 ウラジーミル ソローキン』-海外文学-
ロシアの現代作家ウラジーミル・ソローキンの氷三部作の二作目。
二作目だが一番最初に刊行されている。
現在は 三作すべて翻訳されているので、ブロの道から順番に読んでもいいかもしれない。
過去のソローキン作品は反復を使ったアンチ・ロマンの小説が多いが、この小説はエンタメ作品の方向に進んでいる。
氷のハンマーを心臓に突き立てることで同士を探すカルト集団の物語。
カルト集団の目的のためにまだ目覚めてない同士を集めていく。
55位『愉楽 閻 連科』-海外文学-
中国の田舎で県長が、スターリンの死体を購入して、山の上の記念館に安置して観光名所にしようと考える。
そしてスターリンの遺体を購入する資金を稼ぐために、障害者だけの村、受活村の人々を利用することを思いつく。
トンデモ話が次々に展開する中国のマジック・リアリズム小説。
広島弁で展開される小説は、ラテンアメリカ文学とはまた違った味わいが楽しめる。
54位『アブサロム、アブサロム! フォークナー』-海外文学-
突如ジェファスンに現れたトマス・サトペンという人間の成り上がり物語。
彼は地元のインディアンから土地を買い、プランテーションを作り、後継者を残すために、地元商人の娘と結婚する。
サトペンという人間について様々な人達が語り、サトペンの人物像が徐々に肉付けされていく。
羅生門のように話し手によって、彼に対する印象が違っており、その中でサトペンという人物を浮かび上がらせてく。
物語の聴き手である、クウェンティンと彼の一族はフォークナーの小説「響きと怒り」にも登場する。
南部アメリカを舞台にしたヨクナパトーファ・サーガを完成させたフォークナーの代表作の一つ。
53位『虚人たち 筒井康隆』-純文学-
この小説は、主人公が同時に別々に誘拐された妻と娘を助けるため息子とともに捜索に出るというのが大まかな話の筋だ。
この小説のおかしなところは、主人公が「自分は小説の登場人物である」と自覚しているメタフィクションである点。
そのせいで、なんでもないことでも「これは小説的に何か意味があるのではないか?」と深読みしてしまう。
小説の物語の外には空白が広がるだけであることを主人公は知っており、主人公が語ることで、小説の舞台がうまれ物語が進んでいくが、主人公がそのことを自覚しているのでめんどくさいことになる。
筒井康隆ワールド全開の虚構小説。
52位『ニューロマンサー ウィリアム・ギブスン』-SF-
サイバーパンクSFの古典。
電脳空間(サイバースペース)という言葉が生まれた記念すべき作品。
マトリックスや攻殻機動隊の元ネタになる作品であり、中国を思わせる漢字の並ぶ雑多な屋台が並ぶイメージもここからきている。
コンピュータにジャックインする能力を奪われた主人公ケイスが能力を取り戻すために、ヤバイ仕事を引き受けるところから物語は始まる。
ヒロインの女サイボーグモリィが最高にかっこいい。
このシリーズは全部で3部作あり、続編の「カウントゼロ」、「モナリザ・オーヴァドライヴ」は絶版になっているため、ぜひ再販してほしい。
51位『夜は短し歩けよ乙女 森見 登美彦』-エンターテイメント-
初めて読んだ森見作品。
森見登美彦の独特の古風な昭和軽薄調の言い回しがくせになる。
口だけは達者なダメダメ大学生が不思議ちゃんの黒髪の乙女をストーキングする。
出て来るキャラクターが強烈で、インパクト大。
森見登美彦は文章を読んでいて笑ってしまう数少ない稀有な作家。
小説を読んでいてニヤニヤしてしまう。
周りから気持ち悪がられるので注意しよう。
アニメ映画化もされているよ。
小説おすすめランキング41~50位
50位『図書館の魔女 高田 大介』-ファンタジー-
少年キリヒトは図書館に住む「高い塔の魔女」マツリカの司書として働くため、家を出る。
政治的にも影響力をもつ恐ろしい魔女マツリカは実は少女だった。
ボーイミーツガールの東洋ファンタジー小説。
著者の専門分野が印欧後比較文法・対象言語学という難しそうな分野。
言語に関する話をマツリカが語るがこれには納得。
単行本は上下巻あわせて1300ページぐらいある。
文庫本だと4冊にわかれるほどの大長編だ。
じっくりとファンタジーに浸りたいならおすすめ!
続編というか同じシリーズものもあるよ。
49位『完璧な涙 神林 長平』-SF-
感情のない少年が、遺跡から発掘された機械生命体の戦車に敵と認識されて、追われながら旅をする物語。
過去と未来の時間軸が入り乱れる傑作感動SF。
神林長平は大御所のSF作家で作品が多いが、まずこの本から読むことをおすすめしたい。
完璧な涙というタイトルの意味は読めばわかるよ。
48位『わたくし率 イン 歯ー、または世界 川上 未映子』-純文学-
「わたしは脳で考えているのではなく、奥歯で考えているのではないか?」といった問いを自分に投げかける変わった女性の物語。
テンポの良いリズミカルな関西弁で綴られた小説。
川上未映子は哲学者の永井均の影響を受けているらしく、わたしとはなにか? を問うことがベースにあるように思う。
このデビュー作にはそういう自我に対する意識が色濃く現れている。
思索的な小説。
47位『掏摸 中村 文則』-純文学-
スリをして生計を立てている、天才スリ師の話。
東京でひと目を避けながら生活していたが、絶対悪を象徴するような存在、木崎という人物に依頼を頼まれる。
抗えない運命というものがあったとして、それにどうやって抵抗していくのかを考えてしまった。
スリリングな展開で文体も読みやすい。
大江健三郎賞受賞作で海外からの評価も高い作品。
46位『小銭をかぞえる 西村 賢太』-純文学-
今時、私小説は流行らないと言われているところに投入された現代のデカダンス私小説。
もてない主人公に彼女ができて、同棲をはじめるが主人公の狭量さに次第に険悪な雰囲気になっていく。
主人公のクズっぷりが爽快すぎて笑える。
好きな人は好きだろうが、イラっとする人もいるかもしれないので、はっきりと好みが分かれる。
女性に読んでもらって感想を聞いてみたい作品。
45位『虐殺器官 伊藤 計劃』-SF-
2007年にデビューして2009年に早逝した天才伊藤計劃のデビュー作。
メタルギアソリッドのファンでもありノベライズも書いているだけあり、ハードボイルドな戦争小説。
この後に続編の「ハーモニー」を読んでほしい。
伊藤計劃の小説「虐殺器官」、続編である「ハーモニー」、遺作を円城塔が書き上げた「屍者の帝国」は映画化もされているよ。
44位『恋する原発 高橋 源一郎』-純文学-
東日本大震災が起こった後に原発事故に真っ先に反応してかかれた小説。
震災の後に、チャリティーAVを作ろうと売れないAV監督が奔走する下ネタ満載の馬鹿話。
不謹慎なと言われるかもしれないが、当時の重苦しい雰囲気の中でこの作品を出した作者はすごいと思う。
途中に突然、挟まれる震災文学論では、風の谷のナウシカと震災が結び合わせて語られる評論っぽい展開になる。
日本を代表するアヴァン・ポップ作家の面白小説。
43位『烈しく攻むる者はこれを奪う フラナリー・オコナー』-海外文学-
南部アメリカの森の中で、狂信者の祖父と一緒に暮らし、預言者として育てられた少年ターウォーター。
彼は祖父の狂信者としての教えと、自身の感情に揺さぶられながら生きていく。
人とは違う育てられ方をした人間の孤独を描いた作品。
この本の出版された翌年にサリンジャーの「フラニーとゾーイー」が出版されている。
人とは違う育てられ方をして悩む点は、同じだが、フラニーには兄弟であるゾーイーが傍にいた。
反面ターウォーターには自分を理解してくれる人はいなかった。
そういう意味では「裏フラニーとゾーイー」と言える作品。
42位『オスカー・ワオの短く凄まじい人生 ジュノ・ディアス』-海外文学-
女の子に全くもてないナード青年オスカーを主人公に彼の一族の呪いフクの存在をめぐる物語が展開する。
ドミニカ共和国の独裁者トルヒーヨの残虐性を描きつつ現在までのオスカーの一族を描くマジックリアリズム。
マクロスやスター・ウォーズ、アメコミなどのオタクネタがいっぱいちりばめられた国境を越えた小説。
41位『長いお別れ レイモンド・チャンドラー』-海外文学-
私立探偵のフィリップ・マーロウは偶然知り合った、無職の男テリー・レノックスと仲良くなるが、彼の妻が殺され、テリー・レノックスにメキシコに逃がしたくれと依頼される。
ハードボイルド小説の原型ともいうべき作品。
探偵フィリップ・マーロウの渋い名言が満載の古典ミステリ小説。
「さよならをいうのは、少し死ぬことだ」
ひゅー!
小説おすすめランキング31~40位
40位『ソラリス スタニスワフ・レム』-SF-
SFの古典小説。
タルコフスキーとソダーバーグによって映画化もされている。
惑星ソラリスに異常があるため、心理学者のケルヴィンがソラリスに向かうが、ソラリスの科学者たちは口を頑なにして、状況を何も説明してくれない。
そんな中、自殺した恋人であるハリーが目の前に現れる。
ケルヴィンがハリーから逃れようとしても、何度も何度も現れる。
まじホラー。
森見登美彦の「ペンギン・ハイウェイ」や、上田 岳弘の「太陽・惑星」に影響を与えている傑作。
39位『紙の民 サルバドール プラセンシア』-海外文学-
土星(作者のこと)に常に見られていることに気がついた登場人物が土星に戦争を仕掛けるメタフィクション小説。
機械の身体を持つキカイガメ、紙で作られた紙の民、聖痕をもつ聖人プロレスラー、預言者の赤ちゃんなど縦横無尽の想像力が入り混じるマジックリアリズム小説。
文章が途中で読めなくなったりするヴィジュアルブックのような要素もある。
こちらはスターンの「トリストラム・シャンディ」のオマージュか。
作者はガルシア・マルケスの「百年の孤独」を何度も読み返したという。
納得。
38位『月は無慈悲な夜の女王 ロバート・A. ハインライン』-SF-
月が独立するため地球に対して戦争を挑む物語。
どこかで聞いたことがあると話だと思った人はご名答。
ガンダムの元ネタになっている話。
モビルスーツこそ出てこないが、農業用のカタパルトで地球に岩を射出するところはコロニー落としそのもの。
この小説でたびたび使われる「フリーランチはない」という言葉はあまりにも有名。
ハインラインの作品は「夏の扉」よりも断然こちらをお勧めする。
タイトルがかっこいい古典名作SF。
37位『拳闘士の休息 トム・ジョーンズ』-海外文学-
ベトナム戦争でPTSDになった軍人や、癌で死にそうになっている女患者などを描いた短編小説集。
生きていても仕方のない地獄のような世の中でどうにかして生きている人物を描いた作品集。
ニーチェやショーペンハウエル好きにはおすすめ。
舞城王太郎はこの作品に影響を受けていると思われる。
2作目の「コールドスナップ」も翻訳してるしね。
岸本佐知子の翻訳は秀逸。
彼女の翻訳している小説はどれも面白いのでおすすめ。
あと妄想前回のエッセイも面白い。
36位『SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと チャールズ・ユウ』-SF-
時間の流れない空間でタイムマシンを修理する仕事をする僕。
友達は非実在犬のエドと女性の声で話しかけるコンピュータのタミーだけ。
そんな半分引きこもりの生活をしていた主人公はタイムマシンで登場した未来の自分を撃ってしまう。
未来に自分が撃たれるとわかっている主人公は自分を救うために行動に出る。
円城塔が翻訳した小説。
SF要素に失踪した父との家族の関係を描いた小説。
35位『全滅脳フューチャー! ! ! 海猫沢 めろん』-エンターテイメント-
元ホストでオタクの作者の自伝的小説。
腹が立った相手をトラックでひき殺そうとしたり、「ぼく」に女の子が好意を寄せているのに気づかずにオタク話しかしないところとか、成熟してない若いころの痛い話が満載の青春小説。
著者の海猫沢めろんさんは「文化系トークラジオLife」にも出演していて毎回面白いコメントをしてくれるイケメン小説家である。
34位『別荘 ホセ ドノソ』-海外文学-
ラテンアメリカ文学の立役者の待望の邦訳作品。
別荘に残された金持ち一族の子供たちのドタバタ劇。
舞台が別荘の中という限られた空間の中にも関わらず、別荘の外にいると言われる人喰い人種、子供たちを抑え込もうとする執事との対立、別荘の奥にある秘密の部屋など目が離せない展開。
1978年に書かれたとは思えない面白さ。
訳がいいのかな。
ぜひ読んどいて。
33位『四十日と四十夜のメルヘン 青木 淳悟』-純文学-
チラシ配りの仕事をしている主人公が、家に持ち帰ったチラシの裏に7月4日~7月7日の日記をひたすら書いていく話。
そのたびに少しづつ日記の内容も変わっていく。
グーテンベルクの印刷技術で複製が可能になった世界の文字をごちゃまぜに重ねていったり、書くたびに話が変わっていき、書かれた物語と何なのかを問うような仕組みになっていたり、読者の想像力を刺激する作品。
あらすじを説明しようとしても不可能なので自身で読んで楽しんでほしい。
面白いよ!
あと、作者の青木淳悟さんは雑誌ポパイでも連載しているよ。
32位『逃亡くそたわけ 絲山秋子』-純文学-
精神病院を脱出した男女の患者のドタバタ逃走劇。
幻聴の聞こえる自殺未遂の女性と、名古屋出身で東京をやたらもちあげる男が九州を車で横断する。
逃亡劇だが切羽詰まった感じではなく、ゆる~い雰囲気。
男女が恋人同士ではないのが面白い。
絲山秋子は簡潔で鋭い文体が特徴。
他の作品もおすすめの作家さん。
31位『屍者の帝国 伊藤 計劃/円城塔』-SF-
伊藤計畫が最初の章を書き、その後、円城塔が引き継いだ小説。
フランケンシュタインによって、屍者を蘇生させる技術が確立された世界。
主人公のワトソンは政府の諜報機関から、屍兵部隊を率いて「屍者の帝国」をつくったカラマーゾフの行動を調査するように言われる。
小説好きならこのあらすじを聞いただけで読みたくなるような小説。
カラマーゾフってあのカラマーゾフなの!? って感じで。
実在の人物や小説の人物が登場し入り交じるパスティーシュ小説。
小説おすすめランキング21~30位
30位『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い ジョナサン・サフラン・フォア』-海外文学-
9.11テロで父親を亡くした少年オスカーが はある日、見たことのない鍵を見つける。
.鍵は父親からのメッセージと考え、オスカーは謎を解くため、言葉を喋れない老人とニューヨークの街に出る。
映画化もされた作品だが、映画では触れられていない祖母の過去の話などが書いてあり、多層構造になっていることがわかるため原作を読むことをおすすめする。
素敵な成長譚。
29位『1000の小説とバックベアード 佐藤 友哉』-エンターテイメント-
特定の個人に向けて、物語を作る仕事「片説家」の仕事をしていた主人公は仕事をクビになる。
そんな彼のもとに小説を書くように依頼する人物があらわれる。
小説という作家の実存にかかわるテーマを取り扱いながら、エンターテイメント作品に仕上がっている。
三島由紀夫賞受賞作。
ちなみに佐藤友哉の奥さんは同じ小説家の島本理生らしい。
お互い自分の部屋でタイピングして小説をかいてるんだろうか。
28位『くっすん大黒 町田 康』-純文学-
町田康のデビュー作。
町田康は町田町蔵の名前で、INUというバンドもやっていたパンクロッカー。
沈黙期間を経て書かれたのがこのくっすん大黒だ。
主人公が仕事を辞めて呑んだくれてたら、妻が出て行って部屋が汚くなっていき、家に置いてあった邪魔な大黒を捨てにいくところから話は始まる。
大阪のおばちゃんのようなマシンガントークで繰り広げられる駄目人間のドタバタ劇。
町田康の作品はニッチもサッチもいかなくなって仕方ないから笑ってしまう、そんな笑いに満ちている。
おすすめ。
27位『悲鳴伝 西尾 維新』-エンターテイメント-
2012年、超常現象である「大いなる悲鳴」により、全人類の3分の1が死亡。
2013年、何事にも動じない少年空々空(そらからくう)は、大いなる悲鳴は地球の仕業であり、地球を倒すために地球撲滅軍に入らないかと誘われる。
西尾維新は多作のためいろいろ作品がある。
デビュー作の「クビキリサイクル」を含めた戯言シリーズと悩んだが、最近のシリーズをチョイスした。
個性的なキャラクターの饒舌は西尾維新の真骨頂。
化物語をアニメで観ただけの人も是非読んでほしい。
2018年にシリーズは完結したよ。
26位『空白を満たしなさい 平野 啓一郎』-純文学-
死んだ人間がある日、一斉に蘇ったらどうなるのか?
という思考の元に描かれた小説。
わたしは主人公よりも、主人公に対立するように現れる、警備員佐伯の投げ返る呪詛のような言葉に共感した。
著者の平野啓一郎が提唱する「分人」という概念がドーンに引き続き登場する。
平野啓一郎は綺麗な文語体の文章を書く作家なので、三島由紀夫が好きな人にはおすすめ。
25位『ニルヤの島 柴田 勝家』-SF-
死後の世界の概念がなくなった世界。
文化人類学者のイリアス・ノヴァクは死後の世界と宗教の概念が残る地域に訪れる。
死後の世界を扱った文化人類学SF小説。
ミーム(模倣子)が出てくるので、「ミームマシーンとしてのわたし」を読んどけば尚楽しめる。
ミームの概念がわからなくても本書を読めば理解できると思う。
4つのパートが入れ替わり展開していき最後に収束する群像劇小説。
24位『スタッキング可能 松田 青子』-純文学-
オフィスビルで働く人たちの作品。
仕事場のあるあるネタや、ジョジョなどの漫画ネタを盛り込んだり、登場人物がみんなA田、B山と匿名だったりとポップ感満載で面白い。
読んだ時に筒井康隆のメタ小説「夢の木坂分岐点」を思い出した。
筒井康隆好きならおすすめできる。
著者の女性ならではの毒舌が冴え渡った作品。
書評家の豊崎由美が発起人となったTwitter文学賞受賞作でもある。
23位『巨匠とマルガリータ ミハイル・A・ブルガーコフ』-海外文学-
ロシアの小説家ミハイルブルガーゴフの最後の作品。
小説自体が書かれたのは戦前だが、発禁処分になり、ブルガーゴフの死後1966年に発表された作品。
1930年代のモスクワに悪魔があらわれ、好き放題する。
悪魔の働きに翻弄されて文化人があたふたする小説。
明らかにゲーテの「ファウスト」を思わせる展開と筋書き。
過去と現在をリンクさせる幻想小説。
小説が書かれたのが戦前だったので、ランキングにいれるか悩んだけど、面白いんでいれといた。
他の池澤夏樹編纂の文学全集もおすすめ。
22位『阿修羅ガール 舞城 王太郎』-エンターテイメント-
舞城王太郎は文章に句点をいれず、読点だけで進む軽快な文体が特徴。
今回の作品も舞城節は健在。
主人公アイコは恋に悩む今風の女子高生なのだが、一度体を許した相手が失踪する。
彼を探すうちに、どんどん話が訳の分からない状況に陥っていき、カオスに突入していく。
昔やってたテレビ音楽番組「夜もヒッパレ」のメンバーが出てきたり地獄にいったりほんと意味分かんない。
けど面白い。
21位『神様 川上 弘美』-純文学-
川上弘美はたくさんの小説を出しているが、デビュー作の神様が一番好き。
平易な文体で語られる、「わたし」と様々な存在(存在としか言いようのない)との交流が読んでいてたのしい。
「神様2011」では原発事故に際して、放射能に汚染された土地で神様を描き直した震災文学になっている。
読み比べるとどういったところが変わっているのかわかって興味深い。
クマの優しさにきゅんきゅんする恋愛小説?
小説おすすめランキング11~20位
20位『万延元年のフットボール 大江 健三郎』-純文学-
ノーベル文学賞を受賞している日本を代表する作家。
万延元年のフットボールはその代表作。
大江健三郎の作品は、障害を抱えた子供を持つ作者自身と重ねて描くエッセイのような小説が多い。
今回の作品も障害を持つ子供を抱える蜜三郎が主人公だ。
地元に戻ってきた蜜三郎と弟の鷹四は祖先の兄弟が万年元年に一揆を起こしたことを知り、自分達に彼らの行動を重ねあわせる。
神話的構造をもった作品。
大江健三郎は独特の文体で正直読みにくいのだが、この時期の小説は比較的読みやすい。
1967年谷崎潤一郎賞受賞作。
19位『一九八四年 ジョージ・オーウェル』-海外文学-
核戦争後に3つの大国が誕生し、常に戦争をしている世界。
主人公ウィンストン・スミスの住む国はビックブラザーという独裁者が統治している。
ビックブラザーの統治の下、完璧な管理社会の中で人々は常に当局に監視される生活をおくっている。
ウィンストンは役人として歴史の記録を改竄する仕事についているが、次第に当局に対する不信を強めていき、レジスタンス組織に接触する。
有名なディストピア小説。
他にも有名なディストピア小説はハクスリーの「すばらしい新世界」、ヴォネガットの「プレイヤーピアノ」などいろいろあるがこれが一番おすすめ。
そして一九八四年が一番悲惨な物語だ。
18位『アメリカの夜 阿部和重』-純文学-
阿部和重のデビュー作。
タイトルはトリフォーの映画愛にあふれた映画「アメリカの夜」から。
映画学校を卒業して、アルバイトをする主人公。
自分は特別であると考え、ブルースリーの本を読み体を鍛え、大西巨人の神聖喜劇やプルーストの失われた時を求めてを読みあさる。
自分を他人の様に三人称で語り、セルバンテスのドンキホーテの文芸評論をする。
変わった小説だが、阿部和重がヴァリスが好きと聞いて納得。
異色の青春小説。
面白いから読んどいた方がいいよ。
17位『舞踏会へ向かう三人の農夫 リチャード パワーズ』-海外文学-
本の表紙になっている写真が小説のタイトルでもある「舞踏会へ向かう三人の農夫」という写真。
20世紀の人々のポートレイトを収めたドイツの写真家アウグストザンダーの写真の一枚だ。
小説はこの一枚の写真に関係した3つのパートで物語が進む。
複製技術である写真を論じながら、20世紀を捉え直す。
大量生産のシンボル自動車王ヘンリー・フォードが登場するのも象徴的。
博覧強記の作者の知識量に圧倒される小説。
ピンチョンが好きな人にはおすすめ。
16位『ロリータ ウラジーミル ナボコフ』-海外文学-
大学教授ハンバートハンバートが12歳の少女ドローレス・ヘイズに恋をして彼女の恋人になろうとする話。
彼女の愛称「ロリータ」は今では一般的に使用されている言葉になっている。
特に日本で。
主人公ハンバートハンバートは正にロリコンの元祖ともいえる存在。
インテリロリコン。
ロリータに近づくために彼の母親と結婚したりと、執着心が半端ない。
ちなみにわたしのハンドルネームは一部この小説からきているが、わたしは別にロリコンではない。
ほんとだよ。
言葉の魔術師ナボコフの文章をぜひ味わってほしい小説。
15位『星か獣になる季節 最果 タヒ』-エンターテイメント-
大好きなアイドルが殺人の罪で捕まった!!
主人公山城はアイドルの無罪を証明しようとクラスの人気者森下とともに奔走する。
根暗な主人公と、クラスの人気者が手を組むという凸凹コンビのバディもの。
「死んでしまう系のぼくらに」が好評の新進気鋭の詩人最果タヒの長編小説。
学校の中での他人と分かり合えなさ、思春期特有の他人に対する傲慢さを描いている小説。
最果タヒの詩は死を連想させるものが多い(名前もタヒ。これは偶然らしい)が、テンポの良いストーリーの合間に彼女らしい詩のような文章がはいりこむ。
もともと、小説を生業としてない人の描く自由な小説。
14位『ねじまき鳥クロニクル 村上 春樹』-純文学-
仕事を辞めて無職になった主人公岡田亨は家事をしながら日々を過ごしていたが、ある日妻が失踪した。
岡田亨は妻を取り戻すため、妻が失踪した理由を解明しようとする。
説明不要の日本を誇る作家。
毎年ノーベル文学賞受賞かと騒がれている。
アンチも多いがわたしは大好き(時々比喩でそわそわすることはある)。
本書は全三巻の長編だが一気に読めてしまう面白さ。
第二巻の拷問の描写は圧巻である。
笠原メイをはじめとした魅力的な登場人物も素敵。
13位『フラニーとゾーイー サリンジャー』-海外文学-
長男シーモアと次男バディに小さい頃から、禅や釈迦などの宗教哲学や東洋思想を叩き込まれたグラース家の末っ子フラニーとその上の兄ゾーイーの物語。
フラニーは現実の世界と教え込まれた思想とのギャップに悩み、寝込んでしまった。
心配した母親に呼ばれたゾーイーはフラニーを説得しようとするが・・・
とにかくゾーイーがほんといい奴。
饒舌でイケメンで俳優やってて妹思い。
非の打ちどころなし。
サリンジャーは「バナナフィッシュにうってつけの日」などのグラース家の兄弟が活躍するグラースサーガを描いているが、その中で一番好きな作品。
兄妹愛って素晴らしい。
素敵な家族小説。
村上春樹翻訳版もあるよ。
12位『伝奇集 J.L. ボルヘス』-海外文学-
ラテンアメリカ文学を代表する大家ホルヘ・ルイス・ボルヘスの珠玉の短編集。
彼のメタフィクション小説は後世に多大な影響を及ぼしている。
エッセイ風な文体で虚構に入り込む手法は大江健三郎などにも多くみられる。
全ての文字列の本が収められた「バベルの図書館」、セルバンテスの「ドンキホーテ」を一字一句同じ文章で再現しようとした作家の話「『ドン・キホーテ』の著者、ピエール・メナール」など、文字とは何かを問う作品が多い。
ボルヘスを読むならとりあえずこれでしょう。
11位『みずは無間 六冬 和生』-SF-
惑星探査機のAIに人格を投影された主人公天野透が目的もなく宇宙をさまよっている。
何万年も移動を続ける彼は、自身を改造してスペックを向上したりシミュレーション生命体を作って暇をつぶしているが次第に飽きてくる。
そんななか彼の脳裏に甦るのは人間の頃に付き合っていたみずはの記憶だった。
人口探査機なのに恋愛小説の要素も絡んでくる異色のハードSF小説。
みずはとの思い出がネチネチしてて好き。
第1回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。
小説おすすめランキング1~10位
10位『オブ・ザ・ベースボール 円城 塔』-SF-
一年に一度、なぜか空から人が降ってくる町ファウルズ。
その町でレスキューチームの一員になった主人公はなぜかユニフォームとバットを身につけて、落ちてくる人を助けることになる。
SF作家円城塔のデビュー作。
円城塔の作品の中で一番読みやすい作品だと思う。
彼が「道化師の蝶」芥川賞を受賞した時は審査員の度量の広さにびっくりした覚えがある。
コメントは酷評だったけどね。
ちなみに円城塔のペンネームは彼の師であった金子邦彦の小説、「カオスの紡ぐ夢の中で」に登場する、自動小説生成装置の名前。
純文学よりでSF要素は薄いので幅広い人に読んでもらえる作品。
9位『猫のゆりかご カート・ヴォネガット・ジュニア』-SF-
小説のタイトル「猫のゆりかご」はあやとりのこと。
世界を崩壊させる力を持つ物質「アイスナイン」、貧しすぎてどうにもならない国で流行っているエセ宗教「ボコノン教」などユニークなアイデアが散りばめられた傑作。
ボコノン教の教義が面白く、ヴォネガットらしいシニカルなユーモアに溢れている。
ちなみに彼の作品「タイタンの妖女」は爆笑問題の大田光の所属する事務所タイタンの元ネタである。
太田光が好きすぎて事務所の名前にしたらしい。
ヴォネガットのウィットに富んだユーモアを体験したいならこの小説。
8位『西瓜糖の日々 リチャード・ブローティガン』-海外文学-
村上春樹に影響を与えたと言われるアメリカの作家。
ブローティガンの小説は平易な文章で読みやすく、そしてかっこいい。
ヒッピー文化を思わせるコミューンに住む人達と、その外にある忘れられた世界アイデス(iDeath)が舞台。
藤本和子の翻訳がすごい良い。
日本でブローティガンが広くしられたのは彼女の功績が大きい。
漫画アラサーちゃんの著者、峰なゆかもおすすめしてた本。
村上春樹の「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」などの初期3部作や「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」が好きなら間違いなくおすすめできる作品。
7位『太陽・惑星 上田 岳弘』-SF-
三島由紀夫賞候補に生ったデビュー作「太陽」と芥川賞候補になった「惑星」2編を合わせた短編小説。
「太陽」は赤ちゃん工場を作って金儲けをしている男、工場を視察に行く大学教授達、売春をしている女などの群像劇。
現代の様々な状況生い立ちを描きながら、対比するように不老不死を達成して全てが平等になった未来の世界が描かれる。
「惑星」は世界を滅ぼそうとする「最強人間」を全ての未来が見通せる「最終結論」である精神科医が、2020年の東京オリンピックに食い止めようとする話。
SFを読まない人にも読んでもらいたいSF+純文学の融合した作品。
ちなみに「わたしの恋人」でピースの又吉直樹の「火花」を抑えて第28回三島由紀夫賞を受賞したよう。
「私の恋人」は別途ブログで紹介しているよ。
個人的に今一番次回作が楽しみな新進気鋭の作家。
6位『闘争領域の拡大 ミシェル ウエルベック』-海外文学-
フランスの作家ミシェルウェルベックの初期小説。
この世界は資本主義の自由化によって、金の無いやつには地獄。
そのうえ、恋愛自由主義のなかでは、異性と付き合えるのは一握りの人間であり、それ以外は淘汰される。
そんな絶望的な世界で、性的魅力もなく金もない人間はどうすればいいのか?
ウェルベックの皮肉の効いたユーモアが冴える非モテ小説。
彼女がいない人はとりあえず読むべし。
2018年に文庫化されたので、手に入れやすくなったよ。
5位『テキスト9 小野寺 整』-SF-
惑星ユーンに住む主人公カレンは地球にある超権力議会ムスビメに呼ばれ、盗まれた設計図を取り戻すため旅に出る。
あらすじだけ話すとただの宇宙を旅するSF小説だと思うが大間違い。
要約するのが難しいので是非一度読んでほしい。
創世記のオマージュなど様々なネタが盛り込まれている。
作者の文体の問題だろうが、シリアスなときにもふざけているところがあるので、好みが分かれるかもしれないね。
映画「インセプション」が好きな人におすすめなメタフィクション小説。
4位『ブラックライダー 東山彰良』-エンターテイメント-
世界が一度終わった後の世界。
動物が死に絶え、深刻な食糧難におちいった人々はお互いを喰らいあっていたが、遺された牛の遺伝子と人間の遺伝子を掛け合わせることに成功し、食糧問題は解決する。そんななか人肉を食べることを禁止する法律ができる。
そんな世界の中、ハードボイルドな保安官のバードは列車強盗をしたレイン兄弟を追いかけることになる。
人間より高い知能を持った牛、人に寄生する蟲、討伐軍との戦争、なんでもござれでテンポも良く面白すぎる。
西部劇とSFを組み合わせた未来の神話物語ともいえる小説。
著者はこの後「流」で直木賞を受賞したよ。
3位『パルプ チャールズ ブコウスキー』-海外文学-
史上最低の探偵小説。
私立探偵ニック・ビレーは時給6ドルで依頼を請け負うが、仕事の途中で酒場に行って酒を飲んだり競馬場に入り浸って一日を無駄にするダメ探偵。
そんなダメな探偵ニック・ビレーに立て続けに仕事の依頼がきて次々に仕事をこなしていく。
ブコウスキー唯一の長編小説にて遺作。
フランスのピカレスク小説の大御所セリーヌが小説の中に登場することからわかるようにセリーヌに影響を受けているみたい。
ダメ人間による最高に面白いアウトロー小説。
今まで絶版だったが、最近再版されたのでうれしい限りだ。
2位『V. トマス・ピンチョン』-海外文学-
デビュー作にして最高傑作。
天才トマス・ピンチョンの辞典的と言われる知識量に圧倒される傑作。
ところどころに現れる「V」と呼ばれる女とは何なのか? 時代を超えて存在する「V」の影を追う長編小説。
様々なエピソードが過剰に盛り込まれては流れていく。
トマス・ピンチョンの小説は難解だと言われるが、難しいことは学者に任せて単純に文章を愉しめばいい。
無職のダメ人間ベニー・プロフェインがワニを捕まえるために下水道に潜ったり、ネズミを改宗させようとする神父が現れたりとユーモアに溢れるバカ話が満載。
ポストモダンを代表する小説。
1位『百年の孤独 ガブリエル ガルシア=マルケス』-海外文学-
蜃気楼の村マコンドに住む一族ブエンディア家の100年の隆盛を描きながら展開するマジックリアリズム小説。
登場人物が多く名前が似ているため、巻頭にある一族の系譜図が見返しながら読むとわかりやすい。
一族の始祖ホセ・アルカディオは田舎の村で、独自の方法で地動説を発見する天才。
すごい。
その妻ウルスラはブエンディア家を支えるパワフルお母ちゃん。
長男ホセ・アルカディオはジプシーと共に家を去り、次男アウレリャーノは軍人になり幾度も反乱を起こす。
一族がどんどん増えていく合間に豚の尻尾をもつ子供が産まれもする。
登場人物が次々に入れ替わるカオス。
神話的構造を取り入れた、絶対に読むべきラテンアメリカ文学の傑作。
小説おすすめランキングまとめ
おすすめの小説をランキングで紹介したよ。
まとめてみてわかったのはジャンルは純文学、SFが多く、海外文学はラテンアメリカの作品が多い。
あと作家のデビュー作をあげていることが多いかな。
デビュー作は作家として「自分のアイデンティティ」を問題にした作品が多いので、そういったものに興味を引かれる傾向にある。
これはわたしのライフステージが関係していて、子供がいたり結婚したりしていると、読む作品も変わってくるだろう。
ダメな男が主人公の小説も多かった。
これはまぁ小説は主人公の変化を描くものだと考えれば、何かの欠落をもってて当たり前だけど、単純に共感するっていうのが多いね。
うん。
今回のランキングは最近読んでブクログに記録してある800冊を参考にしているので、かなりバイアスがかかっていることを言っておきたい。
その800冊に思い出せる昔読んで面白かった本を加えている。
小説は読んでいる瞬間にしか体験できない大衆芸術だ。
今は記憶の彼方に消えてしまったが、読んでいる間は面白かった小説もあったはずだ。
あと50位以降は順位付けしているが順位はあんまり気にしなくてもいいと思う。
そんな感じで小説100冊をまとめてランキングしてみたよ。
色々言いたい人もいるだろうが、そんな人には森見登美彦の迷言を引用させてもらう。
諸君、異論があるか。あればことごとく却下だ。
小説を読む参考になれば幸いです。
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