こんにちは友幸(@humberttomoyuki)です。
「キューベンファイバー」という素材を知っているだろうか?
独特の透け感のある特殊な素材で、軽量なアウトドア製品やテントなどに使用される素材だ。
この記事ではキューベンファイバーの特徴やデメリットなどを詳しく解説。
キューベンファイバーを使った商品を紹介しているので、軽量なハイテク素材について知りたい人はみてみてね。
キューベンファイバー(DCF)とは?
「キューベンファイバー」は、Cubic Tech社の軽量で強度の高い化学繊維でできた生地のことだ。
もともと、世界で最も過酷なヨットレースの一つであるアメリカズ・カップに出場するヨットのセイルを開発する過程で生まれた生地になる。
キューベンファイバーと呼ばれることが多いが、これは通称で、正式名称はDCF(ダイニーマ・コンポジット・ファブリック=DYNEEMAR COMPOSITE FABRIC)となる。
キューベンファイバーの生地について
キューベンファイバーは一言でいうと「ダイニーマ繊維をUV樹脂でフィルム状にラミネートした生地」のことだ。
正式名称も「ダイニーマ・コンポジット・ファブリック」とダイニーマの素材が使われていることを表している。
ダイニーマは「超高分子量ポリエチレン」のこと。
ポリエチレン(PE)はレジ袋などに使われている化学繊維だが、ダイニーマは通常2万~30万の分子量を、100万~700万まで高めた密度の高いポリエチレンだ。
そのため従来のポリエチレンに比べて、強度が非常に高いという特徴がある。
そのダイニーマで作られた「ダイニーマ繊維」を樹脂加工で固めてフィルム状にしたのが「キューベンファイバー」だ。
樹脂で固めてあるので、レジ袋とは違い生地にハリがあるが、使っていくうちに柔らかくなっていく。
キューベンファイバーは、一般的な生地のように糸を織って作られていない「不織布」に分類される。
キューベンファイバーの特徴
1.強度が非常に高い
キューベンファイバーはダイニーマを使っているので、非常に強度が高く丈夫なのが特徴だ。
ダイニーマ繊維は、重量ベースで比較すると鉄の8~10倍、スーパー繊維といわれる「アラミド繊維(ケプラー)」の1.4倍以上の強度を持っている。
例えば2mmのダイニーマロープ(SK78)の破断強度は「400Kg」、3mmで「800Kg」、4mmで1600Kgとなる。
2.超軽量な素材
キューベンファイバーは強度が高いにもかかわらず非常に軽量なのも大きな特徴だ。
アウトドアでよく利用されるシルナイロン(リップストップナイロンにシリコンコーティングした生地)よりも軽量で強度が高い。
そのため道具をできるだけ軽量化をするためUL系のアウトドアギアに使われることが多い。
例えばギネス世界記録に認められている世界最軽量のダブルウォールテントにも、キューベンファイバーが使われている。
このテラノバのダブルウォールテントは、2010年時点で「589.7g」とペットボトル1本程度の重さしかない。
昔に比べるとテントは大分軽量になってきたが、それでもダブルウォールテントは1キロを超えるのが当たり前なので、どれくらい軽量なのかわかるだろう。
また、キューベンファイバーは比重が「0.97」と水よりも軽いため水に浮くという特徴もある。
3.防水性が高い
キューベンファイバーは防水性も高い。
もともとポリエチレン(PE)には水を吸収せずに弾く「疎水性」というものがある。
レジ袋に水がついても吸収されずに、表面を流れていくのと同じ原理だ。
また一般的な織物とは違い、表面をUV加工してある不織布なので、生地に隙間ができず水を通さない構造になっている。
ただし生地が防水でも、シーム処理をしていないと縫い目から水がはいるので、完全防水を目指すなら密閉されたドライサックを購入しよう。
4.独特の透け感がある
キューベンファイバーは透けて見えるほど薄く、生地に独特の透け感がある。
生地の色によっても変わるが、生地のオンスが軽くなるほど生地が薄く透けて見えるようになっている。
中に入っているものが見えるので、ポーチなどに使えば、中に何が入っているのかすぐにわかるというメリットがある。
またキューベンファイバーは、その独特の素材感から、ファッションのアクセントとして小物などに利用されることが多い。
面白い素材感で、ガチのアウトドアから街での普段使いまでどちらでも活躍できる素材だ。
5.耐紫外線性があり劣化に強い
キューベンファイバーは化学安定性が高く、紫外線でも劣化しにくい特性がある。
アウトドアでよく使われるポリウレタン(PU)コーティングされたナイロンは加水分解を起こすため、2~3年ほどでベトついてしまい、使えなくなってしまう。
キューベンファイバーは紫外線に強く化学的に安定しているため、日光を長期間浴びても変質しにくく、長期間利用することができる。
キューベンファイバーのデメリット
1.値段が高い
キューベンファイバーは、生地自体の値段が一般的な生地に比べてかなり高い。
そのためキューベンファイバーを使った製品の値段はどうしても高くなる。
例えば「ローカスギア」のモノポールシェルターは、自分でテントの素材を選ぶことができるが、キューベンファイバーはかなり高い。
- クフ(DCF eVent):84,000円
- クフ(DCF):65,000円
- クフ(シルナイロン):33,800円
- クフ(タイベック):28,800円
シルナイロンやタイベックに比べて2~3倍の値段することがわかる。
ハイスペックな生地だが、その分値段もかなり高くなる。
わたしも自分でギアを作っているが、キューベンファイバーは高価なため手が出しにくい。
2.水蒸気を逃がす「透湿性」はない
キューベンファイバーは透湿性がない。
「透湿性」は内部の水蒸気を外に逃がすことだ。
レインウェアなどに使われているゴアテックスなどの素材は透湿性があるので、汗や内部の湿気を外に逃がしてくれるが、キューベンファイバーにはその機能がない。
そのためキューベンファイバーをウェアなどに使った場合、中にこもった熱を外に逃がすことができないので蒸れやすい。
ゴム製のレインウェアを考えるとわかりやすいだろう。
透湿性がないことを逆手に取って、キューベンファイバー製のシェラフカバーでシェラフ(寝袋)を覆い、蒸らすことで内部の温度を上げて暖かさを確保するという使い方をすることもできる。
またローカスギアのように、メーカーによっては透湿性のある「eVent」などの素材をキューベンファイバーに使って透湿性を確保していることもある。
ただし、ただでさえ高いキューベンファイバーの値段がさらに高くなってしまうので、価格的に手が出しにくい。
また透湿性のある素材を使うとその分重量が重くなってしまうため、キューベンファイバーの特徴である超軽量というメリットがなくなるというデメリットもある。
例えばローカスギアのクフの素材ごとの重量は以下のようになっている。
- クフ(DCF eVent):435g
- クフ(DCF):335g
- クフ(シルナイロン):470g
- クフ(タイベック):440g
eVnetを使用したキューベンファイバーは100g程度重くなっていてタイベックと重さにほとんど違いがない。
個人的には、重量を犠牲にしてまで透湿性を確保する必要があるのかという疑問がある。
3.伸縮性がない
キューベンファイバーはUV樹脂でコーティングしているので素材が固くハリがあるが、その分ナイロンのような伸縮性がない。
ナイロンは生地にある程度の伸縮性があるので衝撃を吸収することができるが、キューベンファイバーは強い力が1ヶ所にかかるとそこから裂けてしまう可能性がある。
キューベンファイバーは不織布なので織物と違い、一度空いた縫い穴は塞がらずにそのまま残ってしまう。
ポツポツと穴のあいたミシン目に強い力がかかるとそこから裂けてしまいやすい。
キューベンファイバーは確かに丈夫な素材だが、他の生地と同じように尖ったものに引っかけて引っ張ったりすると、縫い目から裂けていく可能性が高いので、あまり過信しすぎないほうがいいだろう。
4.ハリがあるのでコンパクトに収納しにくい
キューベンファイバーは素材にハリがあるので、シルナイロンのような柔らかい素材と比べて、ややコンパクトに収納しにくい。
シルナイロンの方が重量は重たいが、生地の分量が多いテントなどの場合、キューベンファイバーのほうが収納時にかさばる可能性がある。
またレインウェアやウインドジャケットなどは、パッカブル使用で小さくすることができる製品が多いが、キューベンファイバーはハリがあるので、パッカブルで使うにはあまり向いていない。
ただこれはシルナイロンと比較した話で、ゴアテックスなどの他のラミネートされている生地はハリがある素材ばかりなので、そこまで気にする必要はないだろう。
キューベンファイバーを使った製品
キューベンファイバーバックパック/アンドワンダー
- 素材:キューベンファイバー、別布ポリエステル
- 重量:260g
- 容量:約25L
- サイズ:高さ45cm、幅28cm、奥行き15cm
- カラー:ホワイト、ブラック
アンドワンダーは2011年にスタートしたアウトドアブランドだ。
もともとイッセイミヤケで働いていた男女2人のデザイナーが立ち上げたブランドで、アウトドア素材を使いながらも、アウトドアブランドにはないデザイン性の高い製品が多い。
マスプロダクトでキューベンファイバーを使った製品は少ないが、アンドワンダーは比較的昔からキューベンファイバーを使ったアイテムを展開している。
バックパック本体にキューベンファイバー、ポケット部分にポリエステルの生地を使用していて25リットルで260gと非常に軽量なのが特徴だ。
背面に入っている板を取り除くことで、コンパクトに携帯することができるようになる。
2400サウスウエストパック/ハイパーライトマウンテンギア
- 素材:ハイブリッドキューベンファイバー、ダイニーマXグリッドストップ
- 重量:800g
- 容量:40~50L
- サイズ:高さ45cm、幅28cm、奥行き15cm
- カラー:ホワイト、ブラック
ハイパーライトマウンテンギア(HMG)が2010年にアメリカで生まれたバッグブランドだ。
軽さと丈夫さにこだわり、キューベンファイバーを使った製品を多く販売している。
使用されている「ハイブリッドキューベンファイバー」は、50デニールのポリエステルをキューベンファイバーに貼り合わせた生地で、重さがあるが、キューベンファイバーよりも丈夫な素材になる。
HMGには「2400ウインドライダー」というポケットがメッシュ素材のモデルがあるが、「2400サウスウエストパック」は、ポケット部分を丈夫な「ダイニーマXグリッドストップ」に変更したモデルになる。
メッシュ生地から素材を変えることで耐久性が上がり、岩場やヤブなどポケットが痛みやすい場所でも使いやすくなっている。
また完全防水ではないが、縫い目にシーム処理をして防水性を高めていたり、ステーを取り外して軽量化できるなどのギミックが詰まっている。
キューベンファイバーサコッシュ/アンドワンダー
- 素材:キューベンファイバー、別布:ポリエステル
- 重量:50g
- サイズ:幅21cm、高さ21cm
- ショルダーストラップ:125cm
- カラー:ホワイト、ブラック
こちらはアンドワンダーのサコッシュだ。
バックパックと同じように、本体はキューベンファイバー、ポケットはポリエステルの素材を使用している。
正方形の形をしたサコッシュで、ちょっとした小物を入れるのに便利なアイテムだ。
変わった素材感のサコッシュを探している人におすすめだ。
キューベンファイバードローストリングバッグ/ホーボー
素材:キューベンファイバー
重量:50グラム
サイズ:幅18cm、高さ25cm、奥行き11cm
ショルダーストラップ:74~129cm、幅1cm
容量:約4L
カラー:ホワイト、オリーブ
ホーボー(hobo)は、ノンネイティブから派生したバッグブランドだ。
こちらでは、キューベンファイバーを使った巾着型のバッグを展開している。
肩にかけてサコッシュのように持ち運ぶ事ができ、持ち手がついているので手で持って運ぶこともできる。
カラーはホワイトとオリーブの2色だ。
キューベンファイバーウエストバッグ/ホーボー
- 素材:キューベンファイバー、別布ポリエステル
- 重量:60g
- 容量:約0.8L
- サイズ:幅26cm、高さ130cm、奥行き2.5cm
- カラー:ホワイト、オリーブ
ホーボーのキューベンファイバーを使用した小型のウエストバックだ。
開口部には、止水ファスナーが使われている。
マチがなくかなり薄いウエストバックなので、容量はそこまで多くない。
スマホや財布など、最低限の物をいれるための第2のポケットとして使うのがいいだろう。
ハイブリッドキューベンファイバーウォレット/アンドワンダー
- 素材:ハイブリッドキューベンファイバー
- サイズ:横24cm 縦10cm
- 重量:20g
- カラー:ブラック、ホワイト
アンドワンダーのキューベンファイバーを使った2つ折りの財布だ。
重量20gと軽量でアウトドアで持ち運ぶのに最適だ。
お札入れの開口部には止水ファスナーが使われていて、お札が濡れないようになっている。
アンドワンダーの財布にはキューベンファイバーではなく、ハイブリッドキューベンファイバーが使われている。
キューベンファイバーは独特の透け感があるが、財布の中のお金が透けて見えるのは防犯上よくないということで、ハイブリッドキューベンファイバーを使っているのだろう。
現在は以前よりも厚い生地が使われているが、それでもホワイトだとやや透けるため、
財布が透けるのが嫌な人はブラックを選んだほうがいいだろう。
キューベンファイバーまとめ
- 超軽量で丈夫な素材
- 独特な素材感がある
- 伸縮性や透湿性はない
- 生地の値段が高い
キューベンファイバーは、超軽量で丈夫な性質を持つ生地だ。
その特性を活かして、軽量アウトドア製品に使われるほか、独特の透け感があるためファッションアイテムとして利用されることもある。
生地自体が高価なので、キューベンファイバーを使った製品を展開しているメーカーは少なく製品の値段自体も高めだが、面白い素材感なので気になる人は一度チェックしてみるといいよ。
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