こんにちは友幸(@humberttomoyuki)です。
最近、読んだ小説を紹介するよ。
「ファイトクラブ」チャック パラニューク著だ。
1996年に書かれた小説だが、今年新訳が発売された。
1999年にデヴィッド・フィンチャー監督が映画化している作品の原作に当たる。
映画では主人公をエドワード・ノートン、主人公に多大な影響を与えるタイラー・ダーデンをブラッド・ピットが演じている。
モノへの執着から離れるという意味で、ミニマリストと相性のいい小説。
以前に紹介したミニマリスト本にも何度か映画のファイトクラブのセリフが引用されていたよ。
。
作者チャック パラニュークについて
1962年生まれのアメリカの小説家。
ジェネレーションX世代という1961年~1981年に生まれた世代になる。
ジェネレーションXは日本で言うしらけ世代、新人類と呼ばれる時代のアメリカ版である。
ファイトクラブが映画化されたことで有名になった作家。
代表作はもちろんファイトクラブ。
今年2015年にはファイトクラブ2という小説を書いているらしい。
翻訳されるのを期待。
ファイトクラブのあらすじ
おれを力いっぱい殴ってくれ、とタイラーは言った。事の始まりはぼくの慢性不眠症だ。ちっぽけな仕事と欲しくもない家具の収集に人生を奪われかけていたか らだ。ぼくらはファイト・クラブで体を殴り合い、命の痛みを確かめる。タイラーは社会に倦んだ男たちを集め、全米に広がる組織はやがて巨大な騒乱計画へと 驀進する―人が生きることの病いを高らかに哄笑し、アメリカ中を熱狂させた二十世紀最強のカルト・ロマンス。
わたしは映画を観たことがなかったので、タイトルだけで勝手にボクシングの映画だと勘違いしていた。ガチンコのファイトクラブの印象をそのまま引っ張ってしまった。
実際のファイトクラブはボクシングのようなスポーツではなく、ただの殴り合いである。
ファイトクラブの冒頭
ファイトクラブの主人公は車の製造会社に勤めている。
彼の会社は、車に欠陥があるとわかっていても、リコール金額よりも車の欠陥で事故にあったり亡くなった親族への示談金額が上回らないかぎり、公表することはない。
欠陥のある車はそのまま販売され続ける。
飛行機で飛び回り、車の欠陥の対応をするのが主人公の仕事である。
本人は自嘲気味に「リコール・コーディネーター」と自分のことを呼んでいる。
彼は不眠症に悩まされている。
唯一心の安らぎになる場所はガン患者などのもうじき死ぬ運命にある人たちが集まる互助グループの集会だ。
彼は自分もガン患者だと偽って、互助グループに参加している。
そこで最悪の事態を想定して他の患者と泣くことで、生を実感してぐっすりと眠ることができる。
しかしそこにもう一人、ガン患者でもないのに集会に参加する女性が登場する。
それが、ヒロインのマーラ・シンガーだ。
主人公はマーラの前では泣くことができない。
不眠症を何とかしたい主人公はマーラを集会から追い出そうとするがうまくいかない。
そんななか、ヌーディスト・ビーチでタイラー・ダーデンという映写技師と出会う。
このタイラーとの出会いが主人公の運命を変えていく。
ファイトクラブと所有
主人公がある日、家に戻ると主人公の家は何者かに爆破されてしまう。
ぼくが全人生を費やしてそろえた物たち。
家具を購入する。これで死ぬまで新しいソファが必要になることはないはずだと自分に言い聞かせる。
思い切って買っちまえよ、二、三年は、少なくともソファ問題に頭を悩ませることなく暮らせるぞ。
次は理想の皿一式。次は完璧なベッド。カーテン。ラグ。
そのころには素敵な巣のなかで身動きが取れなくなっている。
かつて所有していたものに、自分が所有されるようになる。
空港から自宅へ帰りついた瞬間までは。
取り揃えたインテリアの数々はすべて木っ端みじんに消え去ってしまう。
住むところを失った主人公はタイラーに電話をかける。
ぼくはタイラーに電話をかけた。
頼むよ、タイラー。ぼくを救い出してくれ。
お願いだ、タイラー。ぼくを助けてくれ。
北欧家具からぼくを救い出してくれ。
気の利いたアートからぼくを救い出してくれ。
完全になどしないでくれ。
満足などさせないでくれ。
完璧になどしないでくれ。
助けてくれ、タイラー。完璧で完全な人生からぼくを救ってくれ。
そして酒場でタイラーと落ち合う。
タイラーは自分の家に住まわせる条件として「おれを力いっぱい殴ってくれ」という。
タイラーは根気よく説明した。傷跡一つない身体で死にたくないということについて、プロ同士のファイトは見飽きたことについて、自分についてもっと深く知りたいことについて。
そして酒場の駐車場で二人は殴り合う。
周りには人だかりができ、そのファイトは酒場の地下で開催されるファイトクラブに発展していく。
ファイトクラブ規則
ファイトクラブは殴り合いだが、規則がある。
この規則は本の冒頭にも書いてある。
- 第一条 ファイトクラブについて口にしてはならない
- 第二条 ファイトクラブについて口にしてはならない
- 第三条 ファイトは一対一
- 第四条 一度に一ファイト
- 第五条 シャツと靴は脱いで戦う
- 第六条 ファイトに時間制限はなし
- 第七条 今夜初めてファイト・クラブに参加したものは、かならずファイトしなければならない。
ファイトクラブを始めた主人公の変化
主人公の引っ越したタイラーの住んでいる建物はボロイ借家だ。
気の利いた家具は存在しない。
おまけに持ち物は出張でスーツケースに入っていた最低限の荷物だけだ。
- 白いシャツを六枚
- 黒のズボンを二枚
- 旅行用目覚まし時計
- バッテリー式電気シェーバー
- 歯ブラシ
- 下着六枚
- 黒い靴下六足
- コンタクトレンズ用品一式
- ネクタイ3枚
しかしファイトクラブに参加するようになった主人公は生きていることを実感し、今までにない充実感を得ていく。
不変なものはこの世に一つもない。
モナリザの絵でさえ崩壊を続けている。
ファイト・クラブができてから、歯の半数をぐらぐら動かせるようになった。
やがて彼はタイラーの影響により上司に対して反抗的な態度をとるようになり、反社会的な人間に変わっていく。
ファイトクラブとカルト集団
やがてファイトクラブは様々な場所で秘密裏に開催されるようになる。
タイラーはファイトクラブの実質的なリーダーとして振舞うようになり、社会に対して騒乱プロジェクトと題して、様々な反社会的活動を開始する。
騒乱プロジェクトのメンバーの荷物は以下の通りだ。
- 死んだときの埋葬費500ドル
- 黒いシャツ二枚
- 黒いズボン二枚
- 丈夫な黒靴一足
- 黒い靴下二足と装飾のない下着二枚
- 厚手の黒いコート一着
- 白いタオル一本
- 陸軍払い下げの簡易寝台用マットレス一枚
- 白いプラスチックボウル一個
最低限の荷物だけを持ってタイラーの借家に集まるメンバーは出家した僧侶のようである。
やがて騒乱プロジェクトはエスカレートしていく。
ファイトクラブと生の実感
ファイトクラブは何もない状態の1つの個としての人間の力を目覚めさせる。
今生きている生を最大限に実感させる。
ファイト・クラブではおまえは銀行預金の額ではない。
仕事ではない。
家族ではない。
自分で思い込もうとしている人物像ではない。
名前ではない。
悩みではない。
年齢ではない。
将来の願いではない。
救済は訪れない。
我々はいつの日かかならず死ぬ。
モノではなく肩書でもなく記号でもない「おまえ自身」をファイトクラブは意識させる。
ストレートな言葉で書かれた文章は男性陣に突き刺さるのでないだろうか。
まとめ
ファイトクラブは、色々持っていたマキシマリストの主人公がミニマリストになっていく小説といえなくもない。
必要最低限の荷物以外は失っても問題ないということ。
それ以外の生きる目的があれば人生に必要なモノはそんなに多くないことをこの小説は教えてくれる。
面白いのでぜひ読んでほしい。
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