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「戦闘妖精・雪風」大御所SF作家の描く連作長編!

こんにちは友幸(@humberttomoyuki)です。

 

今回はSFの長編連作である神林長平著「戦闘妖精・雪風」を紹介するよ。

戦闘妖精・雪風とは

戦闘妖精・雪風はSF作家の大御所、神林長平の小説。

現在「戦闘妖精・雪風(改)」「グッドラック 戦闘妖精・雪風」「アンブロークンアロー 戦闘妖精雪風」の3作品が発表されている。

発表された年は以下の通り。

  • 「戦闘妖精・雪風」1984年(改稿された(改)は2002年に発売)
  • 「グッドラック 戦闘妖精・雪風」1999年
  • 「アンブロークンアロー戦闘妖精・雪風」2009年

発表された年代によって、各作品のテーマも少しづつ変わっているように思える。 

特に「アンブロークンアロー」は今までの3人称から、1人称で語り手が次々に変わっていく作品になっている。

 

小説の他に「戦闘妖精・雪風(改)」「グッドラック 戦闘妖精・雪風」を元にOVAが2002年~2005年に発売されているよ。

 

神林長平の小説は、以前にも「完璧な涙」を紹介したよね。

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戦闘妖精・雪風のあらすじ 

地球への侵攻を開始した未知の異星体〈ジャム〉に反撃すべく、人類は惑星フェアリイに実戦組織FAFを派遣した。戦術戦闘電子偵察機・雪風とともに、孤独な戦いを続ける深井零の任務は、味方を犠牲にしてでも敵の情報を持ち帰るという非情なものだった――。

突如、南極に発生した「通路」から、謎の異性体ジャムが地球に侵攻してきた。

人類は、ジャムの侵攻を防ぐため、通路の向こう側にある惑星フェアリィ星に、FAF(フェアリィエアフォースの略)と呼ばれる軍隊組織を作り、ジャムに対抗する。

 

主人公の深井零(ふかい れい)は雪風と呼ばれる戦闘機に乗る軍人。

 

零の所属する特殊戦は正体不明の敵ジャムに対抗するため、戦闘から入手した情報を必ず持ち帰るという任務を担っている。

味方機がやられていても、情報を持ち帰ることを優先するため、手助けはしない。

特殊戦には、そういった任務に適した、他人への共感能力が低い隊員が集められている。

 

零は、戦場では信頼できるのは、自分と、自分の乗る戦闘機・雪風のみであり、それ以外には誰にも興味を示さない(上司であり、友人のブッカー少佐は除く)。

 

口癖は「おれには関係ない」。

超クール。

 

戦闘妖精・雪風シリーズは特殊戦とジャムとの戦闘を描きながら、人間と機械、意識と無意識といったテーマが展開されるよ。

謎の敵ジャム

戦闘妖精・雪風に登場する敵ジャムは30年以上前に突如現れ、地球を侵攻してきた。

しかし、いまだにジャムの正体は何かわかっていない。

 

ジャムの戦闘機はFAFに攻撃を仕掛けてくるが、戦闘機の中には誰も搭乗していない。

そして、FAFが新しい武器や戦闘機を開発し、戦場に投入すると、ジャムも模倣するように新しい武器や戦闘機を投入してくる。

 

そのため、ジャムとの戦闘はいつまでも勝負がつかない泥沼の様相を呈している。

「ジャムってなんだ。叩いても叩いても出てくる……なぜ最終手段に出てこない……なぜここにいる? おれはなにをしている、どうしてここにいる……」

現実の脅威として存在するジャムだが、地球においてはジャムは一種のフィクションとして扱われている。

 

30年以上前に一度出現しただけでそれ以降一度も出現していないジャムは宇宙人や幽霊と同じ扱いになっている。

「戦闘妖精・雪風(改)」の序章でジャーナリストのリン・ジャクスンがジャムについて書いた本「ジ・インベーダー」の中身が引用されている。

ジャムを忘れてはならない。ジャムは「肌の色は違っても同じ人間」ではない。全人類に対する現実の脅威である。

「現実の脅威」。

そんなことは戦場にいれば当たり前だ。

 

しかし、地球では、この本自体がフィクションとして扱われ、リン・ジャクスンは「フィクション作家」として扱われている。

 

地球と実際に戦地にいるFAFとのジャムに対する認識には大きな違いがある。

これもジャムの正体がわからないことが大きい。

正体不明なジャムは実際に直面しないと、現実の脅威として認識しづらい対象だからね。

 

でこの「正体不明なジャムが何なのか」っていうのが、この作品では重要になる。

 

普通、戦場で「生きるとは何か?」といった哲学的な問いを考えている暇はない。

そんなことを考えてると死ぬから。

 

しかし、戦闘妖精雪風シリーズはジャムの正体が不明なことで「とにかく生き残る必要がある」マッチョな戦場において、「ジャムとは何か?」そして「ジャムに勝つとはどういうことか?」という根本的な問いを投げかけることになる。

人間と機械

人間とジャムとの戦争において重要な役割を果たすのが、雪風を含む機械生命体たちだ。

雪風は自立したコンピュータシステムを持ち、自動でジャムと戦うことができる。

また、作品内において、無人航空兵器も投入されていく。

 

ここで一つの問題が浮き上がる。

「何故、人間が戦う必要があるのか?」

それはこれが「人間対ジャムとの戦争」だからだ。

 

しかし、「人間対ジャムの戦争」といったが、本当に果たしてこれは「人間」対「ジャム」の戦争なのか?

ジャムと地球機械はこういうだろう、これはわれわれの戦いだ、人間の出る幕ではない、関係ないものは引っ込んでいろー零はぞっとするー人間など必要ない。

ジャムは人間に対して、侵攻してきたのではなく、機械に対して宣戦布告をしたのではないか。

これは人間の必要ない「機械」対「ジャム」の戦争じゃないのか。

 

零にとって頼れるものは雪風だけ。

でも雪風、超高性能の自立コンピュータにとって、人間は必要なのか?

 

戦闘妖精雪風シリーズは、描かれた時期によって、微妙に著者のテーマが変わっていっている。

その時の著者の興味関心が向いたものになっているんだろうね。

人間と機械については「戦闘妖精・雪風(改)」で色濃く描かれているよ。

まとめ

戦闘妖精雪風面白いよ!

 

雪風のOVAはブギーポップと一緒で原作読んでないとあんまり意味が分からないだろうね。

まぁOVAだからファンが買うのが前提か。

原作と話も違うので、原作を読んでから観るのがおすすめ。

 

零の声優が謎に堺雅人さんだよ!

後、なぜかBL臭が強い。

けど、5話はかっこいいよ!

 

早く続編出て欲しい。