ハンバート友幸の庭

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「リップヴァンウィンクルの花嫁」のあらすじ、感想、ネタバレ紹介!

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こんにちは友幸(@humberttomoyuki)です。

 

先日、岩井俊二監督の映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」を観た。

今回はリップヴァンウィンクルの花嫁のあらすじや感想を紹介するよ。

 

ネタバレありなので注意してね。

登場人物

リップヴァンウィンクルの花嫁の主要な登場人物は3人だ。

簡単なプロフィールを紹介するよ。

皆川 七海(黒木 華)

23歳の女性。

自分の意見を言わず周りに流されやすい。

派遣で教師をしながら、コンビニでアルバイトをしている。

 

SNS名は「クラムボン」後に「カムパネルラ」

安室 行舛(綾野 剛)

何でも屋。

結婚式で親族のなりすましをする仕事を取り仕切っている男性。

七海に結婚式の親族のなりすましを依頼され、七海に出会う。

 

「ランバラル」の友人。

里中 真白(Cocco)

結婚式の親族のなりすましのアルバイトで七海と出会う女性。

女優をしている。

性格は快活で爛漫。

 

SNS名は「リップヴァンウィンクル」 。

あらすじ

1

皆川七海はお見合いサイトで出会った教師の鶴岡哲也と恋人になる。

七海はクラムボンの名前でSNSを利用していて普段人に言えないことを投稿している。

哲也と恋人になったことを「ネットで買い物をするみたいにあっさり手に入ってしまった」と書き込む。

 

七海は派遣で臨時の教師の仕事をしているが、それだけでは生活できないのでコンビニでアルバイトをしている。

コンビニでアルバイトをしているときに、大学の頃の友人と出会い晩御飯を一緒に食べることになる。

友人はキャバクラで働いていて、七海に仕事を紹介しようかと提案するが、七海は断る。

 

声が小さいことを生徒にいじられて、生徒が用意したマイクで授業をしたことから派遣の教師の仕事を失う。

恋人の鶴岡哲也と結婚することになったので、寿退社と嘘をつき学校を退社する。

 

結婚式を開くことになったが、七海の親は離婚していて親族との付き合いもないので、結婚式に出席する親族がいない。

SNSでそのことを投稿したら、ランバラルが結婚式の親族のなりすましを紹介してくれるという。

 

結婚式のなりすましを取り仕切っている安室と出会い、なりすましをお願いする。

 

ネットを通じて引きこもりの女の子に勉強を教えていたが、仕事をやめたので、やめる旨を伝える。

しかし女の子の母親にどうしても七海に勉強を教えて欲しいと言われ、断れずにこれからも勉強を教えることになる。

 

親族のなりすましをお願いした鶴岡との結婚式を無事に終わらせる。

七海が家の中を掃除しているときに女性のイヤリングを見つける。

哲也が浮気をしているのかもしれないと疑った七海は安室に相談して、浮気調査の依頼をする。

 

哲也の浮気相手の恋人と名乗る男、高橋が突然家に現れる。

哲也は教え子と浮気をしていて、自分はその恋人だという。

卒業アルバムを持ってきて欲しいといい、哲也の部屋の中にある卒業アルバムから浮気相手の写真を見せる。

七海は動揺、高橋は七海をなだめた後に帰る。

 

その晩、哲也が帰ってくるが晩ご飯は食べたから必要ないという。 

 

高橋に呼び出されて、七海はホテルに行く。

高橋は恋人とは別れた。

七海には哲也の代わりに体で償ってもらうという。

 

七海はトイレに入り、安室に助けてほしいとメッセージを送る。

安室は助けに行くから、シャワーを浴びて時間を稼ぐようにいう。

 

七海がシャワーを浴びている間に、安室は部屋に到着し、高橋に「おつかれさん」といい帰らせる。

部屋にセットしていた隠しカメラを回収した後に、七海を呼んで高橋を追い払ったと嘘をつく。

 

葬儀のため鶴岡の実家に向かった七海は夜に哲也の母親に呼び出される。

徹夜の母親は、結婚式の親戚がなりすましだったことや、両親が離婚していて母親は長野で別の男と暮らしていることを知っていて、七海を責める。

さらに高橋と七海がホテルに一緒にいる動画をみせて、七海は浮気をしているという。

 

七海は言い返せないままにタクシーに乗せられ、鶴岡の実家を追い出される。

翌朝、世田谷のアパートに戻って哲也と電話で話をする。

七海は浮気をしているのは自分ではなく哲也の方だというが、哲也はそんなことはないという。

証拠があると言って卒業アルバムの写真を開くが、そこには浮気相手の写真がなかった。

哲也に家を出て行けと言われて七海は家を出る。

3

七海は、家を追い出され職も失った安いホテルに泊まる。

翌朝、清掃員にここで働かせてくれないかとお願いしてベッドメーキングの仕事を始める。

浮気調査の結果を伝えるため、安室がホテルに現れて一緒に弁当を食べようという。

調査の結果、週に2日ほど母親が実家から哲也に会いに来ていたことがわかる。

哲也は浮気はしていなかったが、マザコンだった。

分かれてよかったのではないかと安室はいう。

 

そして高橋は哲也の母親が依頼した「分かれさせ屋」で、七海と哲也を分かれさせるために現れたのだと嘘をつく。

 

帰り際、七海は安室は終末にアルバイトをしないかといわれ受けることにする。

 

安室の依頼したアルバイトは、結婚式の親族のなりすましだった。

そこで七海は真白と出会う。

真白は女優をやっている快活な女性だ。

 

式が終わった後に真白と一緒に飲みに行き、真白とSNSの連絡先を交換する。

4

安室が現れて、新しく住むところと仕事が見つかったという。

仕事は、海外に住む依頼主の屋敷のメイドで月給は100万円。

屋敷に住むので家賃はいらないという。

 

安室に連れられて屋敷に入ると部屋は乱雑に散らかっていた。

もう一人メイドがいるらしいが、まったく片付けていない。

奥の部屋にはクラゲが水槽にいれてあった。

 

翌朝、真白が七海を起こす。

もう一人のメイドは真白だという。

銀座で朝まで飲んでいた真白はすぐに寝てしまう。

 

水槽に入っている動物の世話をどうしたらいいかわからない七海は安室に連絡をする。

しばらくして水槽の業者がきて世話に仕方を教えてくれる。

水槽の動物は毒があるので気を付けるように言われる。

 

それから七海と真白の生活がしばらく続く。

安室もたまに顔を見せる。

5

ある日、七海が水槽の部屋を掃除していると真白が寝ていることに気が付く。

真白のマネージャーから電話がかかってくるが、真白は体調が悪く起き上がれない。

マネージャーが迎えに来て、病院に運ぶことにする。

 

病院に運んでいる途中に、真白が起きて「病院には行かない、仕事にいく」といい暴れる。 

仕方ないので真白を車で現場に連れていく。

 

真白のマネージャーは真白はAV女優だと七海に伝える。

そして真白が住んでいる屋敷は、もともと撮影スタジオだったが真白が気に入って住み始めた。しかし家賃がすごい高いからこのままだと真白は破産するだろうという。

 

七海は安室に電話して、依頼主は海外の金持ちではなく、真白ではないかと尋ねるが、安室は守秘義務があるので答えらないという。

そして依頼主からは「友達が欲しい」と依頼されていると答える。

 

その後、真白が帰ってくる。

真白のマネージャーは、仕事はしばらく休ませるという。

 

その夜真白は水槽の部屋で薬を飲んでいる。

七海が何の薬を飲んでいるのか尋ねても何も答えない。

七海は真白に自分のためにお金を使うのはやめて、もっと自分を大切にしてくださいといい、家賃の安い部屋に引っ越そうと提案、真白はそれに賛同する。

 

翌日、七海と真白は新しく引っ越すための部屋を探すため不動産をめぐり、部屋を決める。

 

その帰りにウェディングドレスを売っている店を見つける。

真白がどうしても入りたいというので、二人は店に入る。

 

試着ができるというので、二人は ウェディングドレスを試着し、無料で写真を撮影できるというので写真も撮る。

教会の中にはいり二人は結婚式で指輪をお互いの指にはめる真似をする。

結局ウェディングドレスを購入し、着たまま家に帰る。

 

家に帰った二人は食事をしワインを飲んで、ベッドに横になる。

 

真白は「自分は幸せの限界が誰よりも早いから、人の優しやがくっきりと見えると壊れてしまう。だからわたしはお金を払って買う」という。

そして「私と一緒に死んでって言ったら死んでくれる」といい、七海は「はい」と答える。

「愛してる」といい二人は眠りにつく。

6

翌朝、安室が屋敷に訪れるとリップヴァンウィンクルに依頼された葬儀屋が玄関の前に立っている。

二人で屋敷に入ると二人がベッドで倒れている。

 

安室は「真白は末期がんに冒されていて、一緒に死んでくれる人を探していた」と葬儀屋に話す。

そして1000万で依頼を受け、真白と一緒に死んでくれる人を探したという。

 

真白はイモ貝の毒で死んだが、七海は生きていて、目が覚める。

安室は驚くが、「真白が死ぬといっていたので心配で駆け付けた」と嘘をつき、SNSのメッセージを見せる。

 

真白の葬儀には、以前結婚式で一緒に家族を演じた人たちや、AV女優仲間、マネージャーなどが訪れた。

しかし真白の両親は姿を見せず、遺骨は受け取らないという。

 

七海と安室は遺骨を持って、真白の母親のもとを訪ねる。

安室は真白の母親に真白の残したお金を渡し、経費を受け取る。

 

真白の母親は真白がAV女優になったことに激怒し絶縁状態だったという。

しばらく焼酎を飲んでいたが、突然服を脱ぎだし全裸になり「人前で裸になるなんてやっぱり恥ずかしい」といって泣き出す。

安室も泣きだして服を脱ぎ焼酎をあおり、七海も焼酎を飲んで泣き笑いの表情にになる。

 

七海は新しい部屋に引っ越しをする。

安室が引っ越し祝いに、粗大ゴミの中から使えそうな家具や家電を持ってくる。

部屋に荷物を運んだあとに、七海にメイドの給料を渡す。

 

安室が帰るとき、七海は大声で「ありがとうございました」といい手を振って見送る。

リップヴァンウインクルとは?

「リップヴァンウィンクル」は、ワシントン・アーヴィングの短編小説に登場する人物の名前だ。

木こりのリップヴァンウィンクルは山奥で不思議な男たちと出会い、一緒に酒盛りをして酔っぱらい寝てしまう。

目覚めると20年経っていて、町の様子が様変わりしていたという話だ。

 

主人公は年を取っていないのに、世間ではいつの間にか長い時間が経っていたということから、リップヴァンウィンクルは「アメリカ版のうらしま太郎」といわれている。

なぜこのようなタイトルがつけられたのだろうか。

 

映画の中で七海と真白が二人でウェディングドレスを着て、境界で結婚式の真似をするシーンがある。

真白のSNSのハンドルネームが「リップヴァンウィンクル」なので、七海はタイトル通りリップヴァンウィンクル(真白)の花嫁というわけだ。

 

またリップヴァンウィンクルはアメリカ英語で「時代遅れの人」「眠ってばかりいる人」を意味する慣用句でもある。

リップヴァンウィンクルの花嫁は「周りに流されて何もしないただ可愛いだけの女性(花嫁)」である七海を表しているともいえる。

 

ストーリー自体も、安室と出会って色々な経験をする七海は、山奥で不思議な男たちと出会ったリップヴァンウィンクルの物語と類似性がある。

七海は成長したのか?

映画の中で、七海は周りに流されているばかりで一切自分から行動をしていない。

その性格のせいで安室に目をつけれ死にかけた。

 

しかし、映画の最後に大きな声で安室に「ありがとうございました」と手を振るシーンがある。

声が小さいと生徒にいじられていた七海が、大きな声で安室を送りだす。

またネットを通じて勉強を教えている引きこもりの生徒に「東京に来る?」と尋ねるところがある。

これは七海が積極的になろうとしている証拠だろう。

七海は以前に比べると自分の意思をしっかりと持ち行動をし始めているように見える。

 

そういう意味では一人の女性が不思議な体験をして成長する物語といえるだろう。

 

ただ最後まで七海は安室のことを「自分を助けてくれたいい人」だと思い込んでいたのはどうなのだろう。

 

安室は詐欺師であり、お金をもらって真白と一緒に死んでくれそうな人間を探していた。

七海に目を付けてからは、七海を離婚させて真白に引き合わせ真白の殺人を手伝っている。

もし七海が真白と一緒に死んでいたら殺人幇助という立派な犯罪だ。

 

安室は、真白が死んだ後に母親に会ったときに、真白の母親と一緒に泣いている。

ずっとお金のために動いていた安室が、この時だけは感情を見せて泣きだす。

ただこの部分だけで安室を「いいやつ」にするには無理があるだろう。

 

観る人によっては、七海は「何の成長もしていない騙されやすい馬鹿な女性」のまま終わっている。

寓話としての物語

七海の受け身な性格は、王子が助けに来るのを待っているおとぎ話のプリンセスそのままだ。

アナ雪が象徴するような現代のプリンセスは自ら行動しているが、七海はほとんど何もしていないので古いタイプのプリンセスだといえる。

 

そしてお姫様体質の七海を助けてくれる王子役の安室は、お金ですべてを解決する資本主義社会の象徴のような存在だ。

七海を助けているのも全てお金のためだ。

その点では単純でわかりやすいキャラクターといえる。

 

安室が真白の母親に会った時に泣きだすシーンがあるが、これはお金に置き換えられない真白の母親の娘への愛情に触れたためだろう。

安室と同じくお金ですべてを解決しようとしていた真白は「優しさがつらいからお金で置き換えて知らないふりをする」といっていたが、それは安室=資本主義社会を生きる人にもあてはまることがわかる。

 

また安室は真白と生活する七海に「真白さんは怖い人ですよ」と言ったり、「今幸せですか?」と尋ねている。

これは資本主義社会でお金優先で生きている安室の、人間らしい優しさが現れている部分だ。

安室は一番わたしたちに近い存在だといえる。

まとめ

岩井俊二監督の作品は「リリィシュシュのすべて」「花とアリス」など二人の女性がキーになる作品が多い。

リップヴァンウィンクルの花嫁も例に漏れない。

 

うがった見方をすれば「女性ならこういうの好きでしょ」みたいなゆるふわ空間で二人の女性が楽しそうにしていて、そこにクラシック音楽が流れている、雰囲気だけの映画ともいえなくもない。

いや雰囲気って重要だけどね。

 

あと本筋と関係ないが、七海が世田谷の自宅に戻り哲也に電話をする時に、ガルシア・G・マルケスの「百年の孤独」が小道具として置いてある。

百年の孤独はブエンティア家が最終的に破滅する物語なので、七海が鶴岡家を追い出されるときに置いてある小道具としては最適だったのだろうか。

 

リップヴァンウィンクルの花嫁はAmazonプライムで見ることができるので観ていない人は観てみるといいよ。