ハンバート友幸の庭

節約、ミニマリスト、商品レビューなどをするブログ

「データの見えざる手」を読めば幸せになるためにはどうすればいいかわかるよ

こんにちは友幸(@humberttomoyuki)です。

 

以前から読もう読もうと思っていて読んでいなかった本。

「データの見えざる手」を読み終わった。

ビックデータを使うことで人間の活動を科学的に解明していくスリリングな一冊。

一言で感想を言うとこの本はやばい。

もっと早く読んでおけばよかったと思わせる刺激的な内容だった。

 

まだビックデータという言葉もなかったころ、著者の矢野和夫さんは実験のため2006年から自分にリストバンド型のウェアラブルデバイスを取り付けて24時間365日8年間データを取り続けた。

データを取るモルモット役の人がいなかったため自身が名乗り出たそうだ。

 

そしてその後、複数の人からもデータを取ることによって腕の動きという小さな情報をから様々なことがわかってきたのである。

エネルギー配分の原則

この世の中には「法則」というものが存在する。

例えば「ニュートン力学」

ニュートンがリンゴが落ちるのを見て、天体もリンゴも同じ運動の法則にしたがっていることに気が付いたというやつだ。

みんなも学校で習ったよね。

ニュートン力学や様々な法則は実は「エネルギー保存則」というエネルギーの総量は一定であるという法則から派生して生まれている。

 

例えば、リンゴは木から落ちる時、重力を運動エネルギーに変えて地面に落ちる。

落ちたリンゴを元の場所に戻そうとすると、別の力をリンゴに加えて持ち上げてやらないといけない。

何もしないのにリンゴが元の位置に戻ったりはしない。

 

これはエネルギーは常に変化をしているが、総量が一定のため新たな力を生み出すことはできないためだ。

エネルギーが0の状態では変化のしようがないのでリンゴは持ち上がらない。

持ち上げようとするなら、人の運動エネルギーをリンゴの運動エネルギーに変化させる必要がある。

 

自然の変化はこの法則にしたがって行われている。

それでは自由な意志をもつ人間だけはこの法則から逃れられるのだろうか。

人間の行動は法則に縛られている

わたしたちは一日を自由に自分の意志で行動していると考えている。

今日の仕事のTO DOリストを作ったり、スケジュール管理をして仕事を進めたり、休みの日の予定を立てて行動したりしている。

 

しかし実はこの行動にエネルギー保存則が関係している。

 

著者はリストバンド型のウェアラブルセンサを12人の被験者につけてもらい、腕の動きをそれぞれ4週間ずつ9000時間にわたって記録した。

人は起きている間は常に手を動かしている。

一日に平均で80回、歩いているときには240回、逆にPCを眺めているときなどは50回程度に下がる。

どんな行動にも腕が動く回数には特徴がある。

記録していくことでそのとき何をしていたかのライフログがとれるようになる。

 

被験者によって睡眠時間や仕事の時間帯などはさまざまである。

しかしこの統計結果をみると驚くべきことがわかる。

人間の行動はU分布に従う

被験者の一日分以上のデータの統計分布をとると、一定の範囲できれいに右肩下がりの直線に収まる形になる(横軸を1分間に腕を動かした回数、縦軸を腕を動かした回数の比率で作ったグラフ)

これはU分布というものを表したものである。

Uはユニバーサルのこと。

同じ形の統計分布に「ボルツマン分布」という物質の熱の性質を決める基本的な分布がある。

このU分布は「1分間の腕の動き」や「店舗の棚の前に客が滞在する時間」などに当てはまることが最近わかってきた。

 

結果はとても規則的で、典型的には腕の動きが1分間あたり60回以上動くことは1日の1/2、120回運動することは1/4、180回運動することは1/8になる。

日にちを変えても毎日きれいなU分布になるという結果になった。

 

これは驚くべき結果である。

腕の動きには行動の種類によって特徴があり、腕の動きの回数は決まっている。

本当に12人が自分の意志で自由に活動しているのなら、U分布になるのではなく、もっとランダムな結果になるはずだ。

 

わたしたちは自由な意志を持っているだと考えているが、実は法則に支配されているのだ。

あなたのやる気がでないのは活動予算を使い切ったからだ

今日中にやらなくてはいけない仕事があるんだけど、なんだかやる気がでない。

スケジュールを組んだけど、計画通りに進まない。

それはあなたがたてた計画がこのU分布に従っていないからだ。

 

最も効率的に活動しようと思ったら、U分布に従って腕の動きの回数と比率を確認しながら、行動するのが一番いい。

一日の自分の活動予算を使い切ることができる。

 

活動予算を意識せずにたてられた計画は、効率が悪く、すぐに特定の動きの予算を使い切ってしまう。

すると、どうなるのか?

 

やる気が出なくなりモチベーションが下がったり、気が進まなくなったりすると考えられる。

やる気の問題は活動予算をうまく使いきれないことからおこる。

 

やる気がなくなったり、モチベーションが下がり集中力が落ちると、今まで集中していたときとは違う動き方になる。

そのため、活動予算の別の部分が使われることになる。

しかし、最も適切な動きでその活動を行えないため、効率は悪くなる。

 

またU分布から外れた場合、その時間帯に自由を制限されて活動している可能性が高い。

同じ作業をずっと続けるなど不自然な環境を強制させられたりしているのがU分布でわかる。

 

わたしたちが自由に時間を使えると考えていた。

しかし実はそうではないことがわかった。

それでは主観的に感じる幸せについてはどうだろうか?

人の幸せを決める3つの要因

いままで、幸せに関する研究はあまり行われてこなかったが、ここ10年の間に幸せに関する研究が急速に進歩している。

それがポジティブ心理学だ。

 

ポジティブ心理学の研究によると、幸せの要因は

  • 遺伝による影響 50%
  • 日々の行動の影響40%
  • 環境による影響 10%

となる。

 

この幸せの要因の割合は以前紹介した本にも同じことが書かれていた。

 

「遺伝の影響が5割もあるのかよ」と思っている人はそこでくさらないでほしい。

残りの自分の力で変えられる残りの50%に注目してみよう。

 

このうち環境による影響はわずか10%しかない。

この環境要因には、人間関係、お金、健康などわたしたちが日ごろ幸せにとって大切だと思っていることほぼすべてが当てはまる。

わたしたちは日ごろ幸せになるために、環境要因を良くしようとしているが、実はほとんど影響がない。

 

残りの40%は日々の習慣や行動の仕方によるものだ。

具体的に言うと、積極的に自分から行動したかどうかが幸せを大きく左右する。

自ら意図して能動的に行動することで人は幸福感を得る。

これは人を助けたり、感謝したりするなどの簡単なことで構わない。

それだけでわたしたちは幸せになることができる。

 

これは環境要因を改善することが幸せになるための方法であるよりもずっといい。

経済活動には必ず勝者と敗者がうまれる。

みんながお金持ちになれるわけではない。

生まれついた家庭環境が悪いことだってあるだろうし、生まれつき体が病弱な人もいる。

環境が必ずしも恵まれているとは言えない場合でも、日々の行動によって幸福度をあげることはできるのだ。

幸せをセンサで測る

著者は幸福の心理学が専門のリュボミルスキ教授と協力して、実験を行った。

共同実験をおこなった企業のメンバーに名札式のウェアラブルセンサを取り付け、データを蓄積したのである。

そして参加メンバーをランダムに分け、今週あった「よかったこと」を記録してもらうグループと「よかったこと」ではなく、中立の報告をしてもらうグループを作った。

 

結果「よかったこと」を記録してもらったグループの幸福度が高まったのだ。

 

幸せというのは個人的、主観的なものだ。

ポジティブ心理学で統計を取るときにも「あなたは今幸せかどうか」を質問した結果をまとめている。

 

しかし内面だけの自己満足であるかというとそれは違う。

幸福度が高まった人たちは内面の変化だけではなく、行動にも変化が表れていた。

本人の意識のしないところで行動が変化したのだ。

 

幸福度が上がったメンバーは、身体の活動量が増え、朝の活動量の立ち上がりが早くなり、活動量のピークが前倒しになった。そして帰宅時間が早くなった。

 

幸せは実は身体活動と強い相関を示しているのだ。

つまり身体の活動量が増えると人は幸せになる。

幸せになるためには「活動量」を増やせばいい。

 

そして幸せは加速度センサで測定することができる。

日ごろから活動量を測定していれば、自分が今幸せな状態なのかそうでないのか、主観的な満足度ではなく客観的に判断できるようになる。

幸せになるとおこる効果

実は幸せな人は環境要因である、仕事や人間関係、健康に恵まれる可能性が高くなる。

幸せな人は、仕事のパフォーマンスが高く、クリエイティブで、収入レベルも高く、結婚の成功率が高く、友達に恵まれ、健康で寿命が長いことが確かめられている。

定量的には、幸せな人は、仕事の生産効率が平均で37%高く、クリエイティビティは300%も高い。

素敵すぎる人生である。

 

面白いのは「成功するから幸せになるのではなく、幸せだから仕事ができるようになる」という点だ。

 わたしたちは上記のような人になれば幸せになれると考えているが、話は逆でまず最初に幸せになることで、憧れている人間になるのである。

もちろん幸せになったからといって、仕事で成功するわけではないし、結婚できないかもしれない。しかし確率を高めることはできる。

 

また幸せは伝染することが知られている。

つまりあなたが幸せになる(活動量を増やす)ことで、他人の活動量を上げて幸せにすることが出来る。

人は他人の身振りや様子を見て気づかないうちに同じポーズを取っていたりと、意識しない間に影響を受けていることがよくある。

あくびが人に移るのも身体的な動きだからだ。

 

幸せは伝染すると聞くと胡散臭いが、身体的な活動が伝播するのであれば納得できる。

人は常にまわりと相互に影響を与え合っているのだ。

楽しいを科学的に作りだす

チクセントミハイ教授が提唱した「フロー」という概念がある。

「フロー」は人が何かに没頭して集中力が高まった状態のことだ。

一流のスポーツ選手が「ボールが止まって見えた」っていうあれである。

 

このフロー状態もウェアラブルセンサによって相関を調べることができる。

フローが起こりやすい状態を作るには、まず身体運動によってU分布に従って、何かに制限をされていない自由な状態であることが必要である。

そしてやや早い身体の動き定量的には1分間に240~360回程度の歩行時に近い動きが継続して生じている状態を作る。

そのときに最もフローになる頻度が高いことが分かった。

フローになりやすい人はやや早めの運動を継続するする傾向が高い。

これは集中するためには体の継続的な早い動きが必要であること、集中すると体の動きは速くなることも示している。

 

フローは何かに没頭して、集中している状態、つまり究極に楽しんでいる状態といえる。

それを身体的に作り出すことが可能になる。

 

著者は具体的に自分のセンサの測定結果を見て、2Hz(平均の2倍の動き)の早い動きが多くなるように心がけているそうだ。

具体的には、会話の時は立ったまま話したり、仕事が停滞した時はオフィスの中を歩き回っているそうだ。

これにより幸福度もあがり、フローの頻度も増えているという。

 

センサでライフログを取ることで人間の内面の意識を変えることができるのである。

まとめ

幸せになるためには動け!!

一言で要約するとこういうことである。

 

よく、散歩しているときに何かを思いつくっていう話を聞くが、あれも動くことによってクリエイティビティが上がっているために起こっている現象なのかもしれない。

うつ病の人に運動を進めたりするのも、身体活動を高めて幸せになるための方法なのだろう。

計画を立てても、やる気が出なくてスケジュール通りに進まないのも当たり前のような気がする。

 

そう考えると、この本が示している結果は、以前から言われてきたものばかりともいえる。

しかし、その定説を定量的に観測して身体活動に結び付けて証明したのは驚くべきことである。

説得力が全然違う。

 

わたしも被験者になってウェアラブルセンサを取り付けてほしくなった。

そんな一冊。

 

関連記事