ハンバート友幸の庭

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「エレノア・オリファントは今日も元気です」孤独な30歳女性の成長物語

「エレノア・オリファントは今日も元気です」孤独な30歳女性の成長物語

こんにちは友幸(@humberttomoyuki)です。

 

先日小説「エレノア・オリファントは今日も元気です」ゲイル・ハニーマン著を読んだ。

孤独な三十路女性の話なんだけど、面白かったので紹介するよ。

 「エレノア・オリファントは今日も元気です」について

「エレノア・オリファントは今日も元気です」は、イギリスの女性作家ゲイル・ハニーマンのデビュー作だ。

 

2014年に未来の作家に送られる賞、ネクスト・チャプター・アワード賞を受賞。

その後、2016年のロンドン・ブックフェアで目玉となり、著作権エージェントの注目を集め、35ヵ国で翻訳されることになる。

2017年には、その年のデビュー作家の中でナンバーワンの売り上げとなり、W・H・スミス賞フィクション部門で、ブック・オブ・ザ・イヤー2017も受賞した。

 

デビュー作ながら、すでに映画化も進行しているという。

ゲイル・ハニーマンはイギリスで期待をもっとも集める新人作家というわけだ。

エレノア・オリファントは今日も元気ですのあらすじ

「エレノア・オリファントは今日も元気です」あらすじは以下の通りだ。

エレノア・オリファントは会社の経理部で働く30歳。

人付き合いが苦手で友達も恋人もおらず、毎日同じような服を着て同じものを食べては、同じ時間に帰宅し、寝て、また起きる――その繰り返し。

そんなエレノアの人生は、ある出会いをきっかけに変わりはじめ……。

周りに“変人"と呼ばれながらも不器用に必死に生きるエレノアが、最後に見つける「人生の大切なコト」とは。

発売後たちまち20万人の女性の心を掴んだベストセラー。

世界中の誰もが、きっとエレノアに恋をする―。

 

 主人公のエレノア・オリファントは、デザイン会社の経理部で働く30歳の女性だ。

 

仕事はテキパキとこなして有能だが、人との距離を測るのが苦手で、恋人どころか友達すらいない。

職場では他の同僚にいじられているし、毎週水曜日には母親から電話がかかってきて、「お前はだめな人間なんだ」とコケ落とされる。

そんな毎日を、家に帰るとウォッカを飲んでしまうことで、やり過ごしている。

 

そんなある日、会社の取引先からもらったチケットで参加したライブで、エレノアはあるミュージシャンに出会う。

ミュージシャンを自分の運命の相手だと感じたエレノアは、ミュージシャンに近づくために色々な行動を起こし始める。

 

この小説は主人公のエレノア・オリファントが成長していき、人との距離を徐々に縮めていく物語だ。

小説において、普遍的なテーマを扱った内容なので様々な国で翻訳されたのだろう。

エレノアの天然っぷりが面白い

この小説の面白い部分の一つがエレノアのユーモアある発言だ。

 

エレノアはいたって真面目な性格なのだが、その性格が災いして、他人となじめないことも多い。

自分が普通だと思っていて、自分以外の他人がおかしいと思っているが、周りから見れば反対で、エレノアはぶしつけな人間だと思われていることが多い。

そしてエレノアはそのことに気が付いていない。

ああ、まただ! どういうわけか職業の種類を問わず、私はびっくりするほど高い頻度で社交性のない人たちに遭遇してしまう。

顧客を直接相手にする仕事だというのに、なぜこんな人間嫌いを雇っているのだろう。

 

道で意識を失って倒れている老人を見つけたときに、同僚のレイモンドに「救急車を呼ぶあいだ話しかけ続けるんだ」といわれたときは、やたらとセーターのことを話している。

なんてすてきなセーターなの! 普通、毛糸では出せない色合いだわ。

ヴァーミリアンといえばいいのかしら、それともカーマイン?

そうね、カーマインって言った方がいいかもしれない。

自分では試したいと思わないだけに、この色に挑戦したあなたはすごいと思うわ。

 

デパートの化粧品売り場で化粧をしてもらったときの感想も独特だ。

マダガスカルにいる霊長類か、北米に生息するアライグマみたい。とってもすてき!

 

エレノアはデザインなどの見た目や雰囲気よりも、店の衛生面や健康面、機能性などのメリットを重視している。 

そのため化粧や服装、髪形など、普通の女性が興味を持つようなものにあまり興味がない。

そんなエレノアだが、小説が進んで人と交わるうちに、徐々にそれらの見た目のことにも関心を持つようになっていく。

エレノアの両親と親について

エレノアの性格をかたち作ったのが、幼少のころの体験と母親との関係だ。

小説を読んでいくと、謎だったエレノアの過去が徐々に明らかになっていく。

 

エレノアをの母親はいわゆる毒親という存在だ。

毎週水曜日に電話をかけてくる母親は、エレノアのことを無能だと言い、ひとりでは何もできず、誰からも愛されない存在だと説く。 

 

エレノアはそんな母親を拒絶したいが、どうしても離れることができない。

そのため、母親の言葉をやり過ごすためにウォッカを飲む。

 

この小説を読んでいる時に、フラナリー・オコナーの「烈しく攻むる者はこれを奪う」という小説を思い起こした。

 

この小説は、周りの人から隔絶され、祖父にキリスト教の預言者になるために育てられた少年の話だ。

こちらは宗教的な色合いも強い本なので、その点は違うが(エレノアは無宗教)小さい時に周りと違った環境で育てられた人の話という点は共通している。

 

小さい時に変わった兄たちに育てられたため、周りといまいちなじめない妹フラニーが悩むサリンジャーの「フラニーとゾーイ」も同様だ。 

ただしエレノアとは違いフラニーには毒親はおらず、心優しいイケメンの兄ズーイがいるんだけどね。

シャーロット・ブロンテの流れを継ぐ作品

小説全体の話でいえば、エレノアが愛読しているシャーロット・ブロンテの「ジェーン・エア」と「分別と多感」の影響が強いんだろう。

主人公のエレノアという名前も、分別と多感の登場人物からとられているようだ。

 

この2冊の古典文学の方が、エレノア・オリファントという作品全体に大きな影響を与えているんだと思う。

残念ながら、両方とも未読なので判断できないけどね。

まとめ

小説に限らず、映画、マンガなどの物語では主人公の成長が主軸になることが多い。

エレノア・オリファントは今日も元気ですは、周りとなじめない孤独な女性が変化していく王道ともいえる物語だ。

エレノアが自分を変えようと決意して努力をし、変化していくところをみる楽しさがある。

自己のアイデンティティに関わる部分を物語にしているので、どんな人でも読むことができるはずだ。

海外本だが、翻訳がとても読みやすいのでサクサク読めるのもいい。

気になった人は読んでみてね。

 

最後に小説に1節を引用して終わりにするよ。

こんな存在の仕方は間違っていることに気づいていた。

だからこそ思い切って顔を上げ、その現実に向き合おうとした。

どうにかして変わりたかった。

わらにもすがる思いだった。

どこか別の場所へ行きたかった。

未来を夢見ることのできるどこかへ。